お知らせ

アップサイクル建築プロトタイプ「アップサイクルキャビン」を用いた分解しやすい建築の実証を始めます
~大学・企業・自治体・市民の共創による研究推進~

2024年12月6日

当社は、国立研究開発法人科学技術振興機構 共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)「リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点」※1・デジタル駆動 超資源循環参加型社会 共創コンソーシアム アップサイクル都市モデル分科会(以後、本分科会)の構成企業として、2022年からアップサイクル建築のあり方について検討してきました。この度、本分科会の成果の一つとして、そのプロトタイプとなる資源循環に配慮したアップサイクル建築のプロダクトである「アップサイクルキャビン」を製作し、当社技術センターにおいて本キャビンに使用する材料の適用性や施工性、活用方法などの実証を開始しました。

本キャビンで実証する内容

(1)アップサイクルしやすい構造・材料を選定し、その施工性を確認

アップサイクルでは、使用する材料が将来的に別製品へ再利用しやすいことが求められます。そこで、アップサイクル建築では、分解しやすい構造を検討し、その施工性を確認しました。

  1. 木材のフレームとアルミフレームを組み合わせた着脱可能な構造を採用
    本キャビンを支える木材のフレームに40×40㎝にモジュール化した格子状のアルミフレームを取り付けました。リサイクル材料で成形した同じサイズの小板をアルミフレームに組み込むことで壁と屋根を構成しました。木材のフレームでは古材をそのままアップサイクルするためのアタッチメント※2を新たに開発しました。併せてパネル状に配置された小板を交換可能にすることで、リサイクル材料で製作された小板を容易に着脱できアップサイクルしやすい構造となっていることを確認しました。さらに、屋外設置を実施して、リサイクル材料の耐久性を評価する予定です。
  2. アルミフレームのモノマテリアル化とリサイクル材料毎の小板使用
    本キャビンに使用しているアルミフレームのモノマテリアル化を行いました。また壁・屋根をリサイクル材料毎の小板により構成することで、リサイクル材の受け入れ・再度のリサイクルがより容易になると考え、その資源循環への効果を検証します。

(2)地産地消の資源循環を考慮して材料を選定

アップサイクル建築では、地域で発生した材料を地域内で使う地産地消の考え方が重要となります。アップサイクルキャビンの柱・梁は鎌倉市内にある臨済宗大本山円覚寺で使用されていた古材を用いるなど、今回使用した材料の多くは本分科会の構成団体である鎌倉市内で回収されたものを使用しています。また、壁・屋根を形成する小板も鎌倉市内で回収された製品プラスチックや詰め替えパック、使用済み紙おむつなどをリサイクルしたものを使用しています。

また、2024年11月13日、駐日オランダ王国大使館主催「The Netherlands Circular Architecture Mission」によるオランダ王国から来日していたサーキュラー建築に関する使節団が技術センターを訪問し、アップサイクルキャビンの見学およびアップサイクル建築に関する意見交換会を実施しました。オランダ使節団からは、アップサイクル建築のコンセプトに共感が得られたと同時に、両国の課題としてバージン材に比べて値段が高くなるリサイクル材の更なる活用には、リサイクル材使用に対するインセンティブが必要であるということで両国の認識が一致しました。オランダ王国使節団メンバーと意見交換を続け、アップサイクル建築の検討を続けていく予定です。

今後本分科会は、2025年度に本キャビンを街中へ設置し、プラスチックやおむつ、植木剪定材など市民から回収した資源を用いた本キャビンを実際に街の公共物として使用することで、資源循環に対する市民の意識醸成につなげるとともに、アップサイクル建築に関する市民の受容性調査や街中での有効活用方法について実証実験を行ってまいります。

アップサイクル建築「アップサイクル・キャビン」
オランダ視察団との意見交換

アップサイクルした素材

部材名称リサイクル材料提供者、製造者
柱、梁 木材 臨済宗大本山円覚寺、株式会社英社寺建築
構造補強壁 海洋プラスチック※3 大成建設株式会社
アルミフレーム(壁、屋根) リサイクルアルミニウム YKK AP株式会社
壁パネル①おむつ再生パネル 使用済み紙おむつ TOPPAN株式会社
壁パネル②木質バイオマス充填複合プラスチックパネル 木材製材端材、リサイクルポリプロピレン 株式会社放電精密加工研究所
壁パネル③飛沫防止用アクリルパネル 飛沫防止用アクリルパネル 三菱ケミカル株式会社
屋根パネル①緑化パネル 詰め替えパック、リサイクルポリプロピレン 花王株式会社、慶應義塾大学
屋根パネル②明り取りパネル 詰め替えパック、リサイクルポリプロピレン 花王株式会社、慶應義塾大学
床パネル 竹・植木剪定材 鎌倉市、大成ロテック株式会社
アップサイクル建築「アップサイクルキャビン」側壁面
アップサイクル建築「アップサイクルキャビン」側壁面
アップサイクル建築「アップサイクルキャビン」屋根面
アップサイクル建築「アップサイクルキャビン」屋根面
古材の接合アタッチメント
古材の接合アタッチメント

注釈

※1 国立研究開発法人科学技術振興機構「共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)「リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点」」
慶應義塾大学 SFC 研究所 田中浩也教授がリーダーとなり、『国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラ ム(COI-NEXT)【地域共創分野】』へ鎌倉市らとともに応募し、2021年育成型、2023年本格型として採択され、設立した研究拠点。この拠点では、「循環者」と呼ぶ新たな市民像を中心とした循環型まちづくりをビジョンに掲げ、鎌倉市・相模原市を主たる実験フィールドとして、必要となる POC(Proof Of Concept:概念実証) を、大学、企業、市民、自治体がともに共創し、具現化するための活動を推進するものです。
本共創拠点の主催するコンソーシアム内分科会「アップサイクル都市モデル分科会」の参加団体(公表時点)は以下の通りです。

  • 慶應義塾大学(主催)
  • 大成建設株式会社(幹事)
  • 鎌倉市
  • 相模原市
  • 花王株式会社
  • 大成ロテック株式会社
  • TOPPAN株式会社
  • 株式会社放電精密加工研究所
  • 三菱ケミカル株式会社
  • ヤマハ発動機株式会社
  • YKK AP株式会社

※2 古材のアタッチメント
資源循環では、次にリユースする際の活用の幅を広げるため、できるだけ加工を減らすことも重要です。古材は断面形状がさまざまであるため、活用が難しいという課題がありました。そこで、古材の断面を活かしたまま梁へ接合することができる接合用アタッチメントを開発しました。大成建設が古材の3Dモデルをもとに古材1つ1つの断面形状にあったアタッチメントを設計し、慶應義塾大学が3Dプリンタで制作しました。

※3 海洋プラスチックパネル
海洋プラスチックパネル:災害廃棄物の資源としての活用方法を検討し、三重県鳥羽海岸へ打ち上げられた漁具と能登地震後、漁港へ打ち上げられた漁業用ロープをから作られたプラスチック板を使用しています。

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