お知らせ

人工石灰石微粉末を原料とするカーボンリサイクルセメントを用いたコンクリート製品を現場実証

2025年3月18日

~国土交通省直轄工事での2年間の現場モニタリングにより良好な品質を確認~

当社は、住友大阪セメント株式会社の人工石灰石微粉末を原料としたカーボンリサイクルセメントを用いて製造されたコンクリート製品を国土交通省直轄工事現場で試行適用し、約2年間にわたる現場モニタリング結果から、その品質が良好であることを確認しました。

住友大阪セメント株式会社を含む6機関と協力し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業(以下、GI基金事業)「多様なカルシウム源を用いた炭酸塩化技術の確立」に、当社は取り組んでいます。
本事業は、「カルシウムを含む廃棄物とセメント工場の排ガス中のCO2から人工石灰石微粉末を製造する炭酸塩化技術」と、「製造した人工石灰石微粉末をコンクリートに利用するための炭酸塩利用技術」の開発を目的としています。今回使用した人工石灰石微粉末※1(主成分:炭酸カルシウム,CaCO3)は、多様なカルシウム源のうち、廃石こうボードを用いてCO2を固定したものです。 当社は、この度、NEDOのGI基金事業の成果として、異なる供用環境となるダムおよびトンネル工事の2地点にコンクリート製品を設置し、約2年間の現場モニタリングを実施しました。

現場モニタリングの実証結果について

(1)ダム工事での気温差が著しい地域における現場モニタリング

国土交通省の直轄工事「成瀬ダム原石山採取工事(第1期)※2の排水側溝として、CO2排出量削減を目的配合が異なる4種類※3のU字溝を2022年10月31日に設置し、モニタリングを開始しました。設置場所は秋田県の標高約500mの寒冷地に位置しており、近隣地域の平均気温は冬季で最低-1.2℃、夏季で最高29.6℃と気温差が著しい地域です。

モニタリング期間中の現地の平均気温

設置2年後の目視調査の結果、いずれのU字溝もひび割れや凍害によるスケーリング※4の発生はなく、良好な状態を保持していました。

U字溝 設置2年後の状況
U字溝 設置2年後の状況

U字溝 設置2年後の状況

また、耐久性評価試験(表層透気試験:トレント法※5)においても良好な表層品質を維持し、高い耐久性が期待されます。

耐久性評価試験の結果

(2)トンネル工事での坑内における現場モニタリング

国土交通省の直轄工事「大野油坂道路 荒島第2トンネル西勝原地区西工事※6」のトンネル内排水路に、気温差が著しい地域におけるモニタリングと同様に配合が異なる4種類の矩形水路を2023年3月3日に設置し、モニタリングを開始しました。対象トンネルは高速道路専用トンネルであり、設置後のモニタリング計測が困難なため、製品製造時に作製したテストピースをトンネルの避難坑に設置しました。トンネル内は常時乾燥状態で、中性化※7や乾燥収縮※8が進みやすい環境ですが、目視調査の結果、設置2年後の矩形水路は中性化や乾燥収縮によるひび割れの発生はなく、良好な状態を保持していました。

矩形水路  設置2年後の状況
矩形水路 設置2年後の状況

矩形水路 設置2年後の状況

また、トンネル内に2年間曝露したテストピースの圧縮強度も全て出荷時と比較して増加しており(図3参照)、供用後のコンクリートはさらに緻密化し耐久性の向上が期待できます。

圧縮強度試験結果

今後、当社と住友大阪セメントは、人工石灰石微粉末およびカーボンリサイクルセメントなど材料品質に関する研究をさらに進め、それらを用いたコンクリートの品質検証を継続し、人工石灰石微粉末を原料としたカーボンリサイクルコンクリートを用いたコンクリート製品の社会実装に向けて取り組んでまいります。

注釈

※1 GI基金事業を活用して炭酸塩化技術でセメント原料となる人工石灰石を製造

※2 「成瀬ダム原石山採取工事(第1期)」発注者:国土交通省東北地方整備局

※3 人工石灰石を普通ポルトランドセメントに内割で、配合①は5%、配合②は30%、配合③は43%添加したコンクリートであり、配合④では添加率を配合③程度としたうえで、普通ポルトランドセメントの代わりに高炉スラグと刺激材を使用してCO2排出量の更なる削減を進めたコンクリートである。

※4 コンクリート内部の水分が凍結と融解を繰り返すことで、コンクリートの表面が剥離する現象

※5 表層透気試験(トレント法)
コンクリート表層部の透気係数を計測して表層部の緻密さを評価する試験方法。透気係数が小さいほどコンクリート表層が緻密であり良好な品質であると評価されます。

※6 「大野油坂道路 荒島第2トンネル西勝原地区西工事」発注者:国土交通省近畿地方整備局

※7 空気中の二酸化炭素とコンクリート中のアルカリが反応してpHが低下し、鋼材の腐食や、鋼材の腐食によりコンクリートにひび割れが生じる現象

※8 乾燥によるコンクリート中の水分蒸発により、コンクリートの体積が減少し、収縮する現象。収縮によって引張力が生じ、ひび割れが生じる

※9 秋田県横手市の平均気温 出展:気象庁ホームページ

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