ハイブリッドTASS構法
【Hybrid TASS】
すべりとゴムの組み合わせが超長周期化を実現、大成建設の高性能免震技術構法です
1. ハイブリッドTASS構法の性能と効果
すべりとゴムで超長周期化を実現した高性能免震技術
ハイブリッドTASS構法はすべり支承と積層ゴム支承の2つの免震装置を組み合わせることにより、一般的な免震装置が2秒程度の長周期化を目標としているのに対し、4~5秒という画期的な長周期化を実現しています。
すべりによる摩擦がダンパー効果を兼ねるので、通常はダンパーを取り付ける必要がないため、ローコストであるというメリットがあります。
あらゆる建物で免震効果を発揮
地震動には短周期から長周期までのいろいろな周期の波が含まれています。一般的な地震では、主に1秒前後の短い周期成分をもつ波が大きなエネルギーを持っているため、建物にも強い影響があります。
ハイブリッドTASSは、元々周期を持たない「すべり現象」を利用するため、一般の免震に比べ、より長周期化が容易で、様々な条件にある建物に対して免震効果を有効に発揮することができます。また、大きな免震効果により建物に伝わる地震力が大幅に減衰されるので構造部材の断面がよりスリム化できるため設計の柔軟性の向上や上部躯体費用の軽減といった効果も期待できます。
免震構造では長周期化による効果と同時に、エネルギーを吸収する「減衰効果」もはたらき、その両面で建物への影響を弱めています。
ハイブリッドTASS構法は、エネルギー変換効率のよい「すべり現象」を採用しているため、減衰効果も大きくなります。
長周期化がもたらす高い免震性能
図は同じ地震波を用いて、主従の免震方式について応答解析した結果です。縦軸と横軸は地震時に免震層にかかる加速度と変位を示しており、原点に近いほど揺れが小さく性能がよいことになります。各方式の応答点の範囲を囲むと青色で示したハイブリッドTASS構法の輪は、他の形式に比べて原点に近いことがわかります
実証された免震効果
阪神大震災の波形を使ったシミュレーションでは、地面の最大加速度"820gal(ガル)"に対して、免震建物の加速度は"110gal"と、およそ1/8程度に低減されています。
100ガルの揺れはコップの水が波立つ程度とされており、家具等の転倒は、200~250galを越えるあたりから始まるとされていますから、ハイブリッドTASS構法により、地震力が大幅に低減されたことがわかります。
2004年10月23日に起きた新潟県中越地震で小知谷市は震度6強の激しい揺れにみまわれました。この大地震に対してハイブリッドTASS構法を用いた免震建物「水仙の家」ではキャビネットの転倒もなく、食器棚の食器の破損もありませんでした。
2. 広い適用範囲をもつ「ハイブリッドTASS構法」
高層建物への適用
建物は高く、そして細くなるほど周期が長くなります。そのため、一般的な免震において適用できるのは14~15階建てまでの建物に限られていました。また建物の巾と高さの割合(搭状比:H/B)も2:1程度以内に抑える必要がありました。
ハイブリッドTASS構法は長周期化に優れているため、固有周期の長い超高層建物を免震化するのも容易です。ハイブリッドTASS構法は20階建て程度まで適用でき、搭状比も3:1程度まで可能にしています。また平面形状にもとらわれず幅広い用途の建物に対応できます。既に高さ135m地上41階の超高層マンションを始め、多くの超高層免震に適用されています。
軟弱地盤への対応
一般的には施設が立地する地盤が軟弱である場合は、免震構法には向いていません。軟弱地盤は地盤自体の固有周期が長い上に大地震時にはさらに長周期化するため、軟弱地盤に立地する免震建物の固有周期は、より長周期化することが要求されます。
ハイブリッドTASS構法はこれまでにない4~5秒の長周期化が可能ですから、こうした軟弱地盤においても十分な免震性能を発揮します。
ローコスト・ハイパフォーマンス
優れた免震効果により建物に伝わる地震力が大幅に低減されるので構造部材断面がよりスリムになり、上部躯体費用が低減されます。さらにすべりを用いることにより、免震装置自体のコストも低減されます。
これらによりハイブリッドTASS構法の建物はローコスト・ハイパフォーマンスを可能にしています。
設置箇所の柔軟性
ハイブリッドTASS構法は建物の条件や計画に応じて様々な位置に免震装置を設置することができます。
一般的に建物全体を免震するには基礎部分を免震とします。
しかし、地下階が2階3階と深くある場合は、地下1階や地上階等、中間階で免震を行うことも可能です。
また、新開発の「杭頭免震」は、一般的な「免震基礎」を省略して、直接杭の上に免震装置を設置することで、コスト削減と工期短縮を図っています。
免震レトロフィット
ハイブリッドTASS構法は、既存の建物を免震建物にする「免震レトロフィット」にも適用可能です。免震レトロフィットにより免震化された上部の建物は、基本的に耐震補強が不要になるので、建物を使いながら行うことも可能です。また、建物の状況や使われ方により、新築と同様「基礎免震」や「中間階免震」の適用も可能です。
今ある建物を使いながら免震建物に!
免震レトロフィットは、建物を使いながら基礎部分や中間階の柱等に新しく免震装置を組み込むことによって、既存の建物を免震建物に生まれ変わらせる「免震補強工法」です。
日本で始めての基礎免震レトロフィットと世界初の中間階免震レトロフィットが行われました。
東京都豊島区役所本庁舎では、庁舎としてはじめて「建物を使いながらの免震レトロフィット」を採用しました。
免震レトロフィットによりPMLを15%以下にすることで、win-winのビジネスモデルを構築した事例です。
3. すべりを使った高性能免震「ハイブリッドTASS構法」のしくみ
ハイブリッドTASS構法の原理
ハイブリッドTASS構法では弾性すべり支承がすべることで高効率な揺れの減衰効果を発揮します。
地震エネルギーを摩擦による熱エネルギーに変換し、発散させることにより建物に伝わる揺れを、より小さなものにしているのです。
積層ゴム支承と弾性すべり支承を適正に組み合わせることにより、
すべり現象の発生をコントロール出来るので、小地震時から高い免震効果を発揮します。
積層ゴム支承建物を長周期化し、揺れを穏やかにします。
建物の計画や運用に柔軟に対応
マンション、オフィス、工場、病院、そして高層から低層、狭隘な立地や軟弱な地盤など、建物の種類やその条件は正に千差万別。また、一口に免震といっても、そこで要求される性能もまた様々です。大成建設は優れた免震性能と幅広い適用性を持つハイブリッドTASS構法を核に、微振動制御を備えたMic免震システム、センサーが揺れをとらえ、制御し、より高い免震効果を引き出すセミアック免震、通常の耐震建物のなかに部分的に免震性能を付加し、重要な機能を守る床免震システムTASSフロアなど、地震対策における様々なソリューションに対応できる技術の開発、提供を続けています。
高度な微振動制御が可能な画期的な免震構法です。
センサーが揺れをとらえ、制御する。
より高い免震効果を引き出す、可変減衰力免震。
通常の耐震建物に免震性能を付加。重要な機能を守ります。
既存の建物にも導入が可能な床免震(部分免震)システムです。