施設を利用しながら震災への備えを行いたい。

コンセプト
会津盆地にある福島県会津若松市。名所旧跡が多く見られ、代表的なものに白虎隊士墓があり、平日でも観光客が見られます。
この地域にある会津中央病院様は、898床25科の診療科目を持つ総合病院です。会津若松地域の基幹病院として、地域にあって何をすべきか常に考えられ、建物に関しても利便性をふまえて再構築し、地域の皆様に高度医療・医療福祉を提供できるよう貢献されています。
今回は、新新館増築工事と平行して、既存棟(新館)を最新の免震技術でリニューアルされました。日本での免震レトロフィット(病院)としては2例目の当該病院では、既存中間免震レトロフィットを採用されています。竣工後、2つの建物はウエスト棟として誕生しました。
ウエスト棟
- B1階:Amenity street(コンビニ、美容室、カフェ)
- 地下のアメニティストリートでは、様々なショップ展開で院内であることを感じさせません。
- 1階:Hospitality hall(受付、外来外科、検査室、相談室)
- 光と水のエントランスホールは、外光が射し込む明るい空間です。待合ロビーは、水族館を思わせる大きな水槽の中で泳ぐ熱帯魚が気分を和ませてくれます。


- 2階~4階:Sickroom area(一般病棟)
- 木目調で統一され自然の光と風を感じることができる明るく開放的な病室です。全ての病室に椅子式シャワーとトイレユニットが完備されています。
- 5階~6階:Private room area(個室病棟)
- 一般病棟と同様に木目調で整えられた室内では、完全個室という落着いた環境の中で治療に専念することができます。
- 7階:Salon de grand(サロン、AGIO)
- 最上階から磐梯の峰々など病院周辺の景色を楽しむことができる屋上庭園及びサロンは、利用者の方々に癒しの空間を提供しています。

ソリューション
免震レトロフィットとは
既存の建物の基礎や中間階に免震装置を設置し、外観や内装及び設備を損なうことなしに建物を免震建物に生れ変わらせる方法です。免震化により、地震の強い揺れをゆっくりとした揺れに低減します。建物本体が損傷しないだけでなく、建物内部の什器、設備機器の移動、転倒を防ぎます。そのため、適切な対策を施しておくことで震災後の建物の機能維持や短時間での復旧を図ることが可能となります。

免震レトロフィットの特徴
- 1建物を使用しながら施工できる
免震工法を行っているフロア以外は通常通り使用できる - 2トータルコストが抑えられる
免震施設への建替や一時移転などに較べて費用が少ない - 3施工後も利用スペースの減少が少ない
室内空間を有効に使える
たとえば、「建物の日常使用に影響の少ない地震対策をしたい。」「震災時にも防災拠点として機能を維持したい」といったことを考えられている施設に有効です。
免震レトロフィットの採用
今回の建設にあたり会津中央病院様は、既存棟(新館)改修に免震レトロフィット(地下中間階免震)を採用しました。



ローリング計画

既存棟(新館)は、免震レトロフィットの計画と平行して、病院機能向上のための改修工事を行いました。施工期間中は入院・外来患者さんに不便を感じさせないよう配慮するために病院の機能を充分に理解し、お客様と共に引越及び工事の計画案を作成しました。また、施工作業を実施していく中で問題があれば随時解決を図る為に連携していきました。
お客様の声
大成建設担当者より

大成建設 東北支店 作業所長 管野 章
既存棟改修で採用した免震レトロフィットは、病院運営を行いながらの工事となるため、会津中央病院の皆様の御協力によって実現できたと思っております。
事例がほとんど無かった病院の免震レトロフィットを担当させていただいたということと共に、関係者の方々としっかりとコミュニケーションを取りながら、竣工できたという経験は、私はもちろんのこと、配属になった社員全員にとっても貴重な経験をさせていただいたと感謝しております
また、自分がイメージしていた病院の意匠の枠組みを超えた病院で、その意図を理解し、現場に反映するように努力しました。施工していく上で難しい建物ではありましたが、関係者の方々の熱意に引き込まれるように仕事に取り組むことができ、非常に勉強になりました。
工事概要
発注者 | 財団法人 温知会 |
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所在地 | 福島県会津若松市鶴賀町1-1 |
竣工 | 2010年1月 |
延面積 | 11506.2㎡ |
設計 | 株式会社羽深隆雄・栴工房設計事務所 |
URL |
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財団法人 温知会 会津中央病院 理事長 南 嘉輝 様
Q:病院の地震対策についてのお考えを聞かせてください。
A:今まで想定していたのは、自分たちの病院も被害を受けてしまう中で、患者さんたちをどう守っていくかということでした。
しかし、建物が安全で使い続けることができるということであれば、多くの被災の方への医療サービスも減損することなく、従来通りの力を発揮することができることになります。これは大変ありがたいことです。
Q:今回の計画では全て免震を採用されていますね。
A:地震の時に一番大きく揺れるのは、やっぱり人の心だと思うんです。慌てる。だから多くの事故も起きる。
免震は地震による直接の被害を防ぐだけでなく、人の心が揺れることで生じる様々な被害も抑止できるという点に大きな安心感があると思います。
※耐震ネットより一部抜粋