株式会社損害保険ジャパン

建物の価値を高める総合的なリニューアル

株式会社損害保険ジャパン

大成建設に期待すること

  • 築後36年を経る本社ビルを使い続けるため、時代や本社業務の変化に応じて、つねにビル性能を見直す必要がある。
  • 本社ビルとしての機能維持や、これまでの経年変化を踏まえて現状を把握した上で、建物の利用上の価値を高めるためのリニューアルを計画し、ビルを使いながら安全に工事を行ってもらいたい。

成功事例

西新宿のランドマークである株式会社損害保険ジャパン様の本社ビルは、東京都新宿区において当時、4番目に高い超高層ビルとして昭和51年に完成しました。
建築学会の有識者グループによって基本設計が行われ、その指導を仰ぎながら大成建設が実施設計および施工を担当しました。

損保ジャパン本社ビルでは築後36年のあいだ、中長期計画に基づき、BCP(事業継続)対策や地震対策、省エネへの対応など時代の要請や本社業務の変化に追従するための様々なリニューアルを、業務を停めることなく行っておられます。

損保ジャパン本社ビルの外観
損保ジャパン本社ビルの外観
損保ジャパン

本社機能

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント
取締役執行役員 技術支援部長 林田 健 様

損害保険会社の本社機能を担う拠点として完成した本社ビルは、特に「防災」に重点を置いて設計されています。建物のデザインにこだわり、非常に良質な材料を使用していますので、築後36年を経ても劣化が少なく陳腐さも感じられません。
しかしながら、ビルは人と同じように、年数を重ねるごとに“衰え”や“疲れ”など様々な問題を抱えるようになり、不具合の出ることが多くなるのも事実です。

大成建設様は、本社ビルに長年寄り添う「主治医」のような存在であり、例えば「受変電設備など各設備の寿命はどれくらいもつのか」「耐震性能レベルは時代に即しているか」など建物のいわば“健康診断”を定期的に行い、設備や構造、外装、内装などビル性能に関わるすべての要素について状態を把握していただいています。
私たちのビルの運用に対する考え方や要望を共有し、優先して取り組むべきことを協議した上で、「いつ・どのような方法でリニューアルを行うと効果的か」という視点で営繕計画を提案し、ビルを使いながら安全に工事を実施し、その後のメンテナンスも行うなど総合的なリニューアルを実現していただきました。

このように、建物を知り尽くした知見や技術、安全に工事を進めるためのノウハウやネットワークなど総合建設会社としての優位性を活かしてリニューアルを行い、ビルを健康な状態に回復させたり、若返らせたり、長寿命化することで、私たちの大切な資産に新しい価値を生み出していただいております。

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント 取締役執行役員 技術支援部長 林田 健 様

ソリューション1:ビルの「心臓」と「脳」を止めない!─受変電設備/中央監視設備のリニューアル

ビルの“心臓”である受変電設備をリニューアル

照明や空調などの一般設備や、非常照明やスプリンクラーなどの防災設備へ電源を供給する受変電設備は、建物内における電力の分配・供給を安全かつ効率よく行うためのシステムです。人が、心臓から全身へ血液が流れて手や足などを動かすことが出来るのと同じように、受変電設備から建物全体へ電力が供給されることで、付随する各設備が作動することができます。

大成建設は、損保ジャパン本社ビルにおける受変電設備が更新推奨時期(運用を開始してから20~25年)を経過していることを考慮し、その劣化状態や現状の設備負荷を明確にしたうえで、将来の運用に見合う受変電設備へ更新するための改修計画を提案しました。

受変電設備

損保ジャパン本社ビル

設計本部設備設計Ⅱ群 加藤 文都

損保ジャパン本社ビルでは、受変電設備の更新推奨時期と前後して、すでにBCP対策の一環として72時間対応の自家発電機を導入されていました。さらに、数年後には中央監視設備の更新推奨時期を迎える予定でしたので、発電機→受変電設備→中央監視設備の順に、各リニューアルを連携させて効率よく実施することを提案しました。

築後32年目に初めて実施した受変電設備のリニューアルでは、照明や空調の改修など、本社ビルにおいて今後実施していくと予測される省エネルギー対策を見据え、最適な容量・性能をもつ設備の選定を行いました。
具体的には、OA機器の省電化・照明器具の高効率化などによって、本社ビルの完成時に比べて受電契約が減少してきていたので、トランス(変圧器)容量を見直し、将来において最適と思われる容量を改めて想定しました。その結果、今まで4台使用していたトランスを高効率型のものに換え、台数も3台へと変更しました。環境負荷の低減やランニングコストの抑制につながっています。

省エネルギー対策

中央監視設備

ビルの“脳”である中央監視設備をリニューアル

中央監視設備は、受変電設備や空調、照明、エレベーターなど、それぞれの設備が正常に機能しているかについての情報を集約し、建物全体を監視・コントロールするシステムです。各設備への指令も行う中央監視設備は、いわば人の「脳」であり、そこに紐づく空調・衛生・電気などの各機能への信号系統は、建物内に張り巡らされた「神経」のようなものです。

受変電設備と同様に、止めることが許されない中央監視設備は、定期的な検査・メンテナンスはもちろん、更新時期を事前に予測し不具合が起こる前に先行して改修計画を立てる必要があります。

お客様の要求に沿ってご提案

設計本部設備計画グループ 三谷 正志

中央監視設備のイメージ
中央監視設備のイメージ

中央監視設備の更新推奨時期は、概ね15年程度です。損保ジャパン本社ビルでは、完成後30数年が経つ頃に二度目の更新を検討するにあたり、まずはお客様が「建物をどのように使ってきたか」「今後どのように使っていきたいか」など運用状況やご要望について伺い、建物内の「何を監視・制御するか」というポイントを洗いだしました。そうすることで、新たに導入すべきシステムの機能、監視・制御すべき箇所や設備などについて詳細に計画することができ、お客様の要求に沿ってご提案することができます。

中央監視設備がきちんと機能すれば、それに紐づく照明や空調などの各設備も正しく作動します。一般的にはあまり目にすることのない中央監視設備ですが、オフィス環境の快適性を左右する裏方役であり、建物を陰で支える大黒柱と言えます。私たちは、建物を熟知する総合建設会社の強みを活かし、中央監視設備とそれに繋がる諸々の機能、それらと建物との取り合いといったプランニングから、お客様に安心してもらえる安全な工事計画・実行までトータルコーディネートを行い、建物の主治医としての役割を担っております。

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント
技術支援部 担当部長 安江 新治 様

損害保険会社の本社ビルとして、災害が起こった際にいち早く機能しなければならないことは言うまでもありません。その社会的使命を果たすため、本社ビルでは東日本大震災が起こる以前よりBCPへの取り組みを重視してきました。その一環として、空調や照明など各設備を継続して安定稼働するため、それらを機能させるための中核を担う受変電設備と中央監視設備のリニューアルを順序立てて効率よく行いました。

当社は大成建設様と定期的なリニューアル検討会を持ち、中長期計画の策定とその実施を行っております。ただ最新の設備を導入する、あるいは劣化を修繕するだけではありません。ビルそのものの特性や各設備の状態を熟知し、当社の運用方法や要望を共有いただいているからこそ、費用対効果に優れるリニューアルで、建物をつねにバリューアップすることができるのだと思います。

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント 技術支援部 担当部長 安江 新治 様

ソリューション2:超高層ビルの「骨や筋肉」を傷めない!─長周期地震動への対策工事

超高層ビルの構造部分(柱や梁、杭など)は、人体の骨と、それを支える筋肉に例えることができます。日本の超高層ビルは、しなやかで粘り強い構造となっており、短周期の地震動に対しては柳に風のごとく湾曲してその衝撃を受け流し、ビルの倒壊を防ぎます。ちょうど、人の背骨が歩くたびにゆるやかに湾曲し、歩行時に発生する振動や衝撃を吸収することで、腰痛など体の不調を防ぐのと同じです。

一方、2004年の十勝沖地震で存在が明らかになった「長周期地震動※1」を超高層ビルが受けた場合には、しなやかな構造のため長い周期の地震動に共振して大きく揺れたり変形する可能性があります。すぐに建物自体の倒壊、崩壊につながる恐れはありませんが、長時間大きな揺れが継続するため、構造部分に疲労損傷が累積したり、建物内部にいる人や、建物内の仕上材、設備等の非構造部材へ様々な影響を与えます。また、家具や什器の移動や転倒、エレベーターの長時間にわたる運転停止などの被害が発生する可能性があります。

  1. ※1長周期地震動:地震で発生する、周期が数秒以上(長周期)のゆっくりと長い揺れのこと。震源から遠くまで減衰せずに伝わり、特に平野部で揺れる特性を持ちます。超高層ビルなどの高さの高い構造物は、長周期の震動に共振して長時間揺れる恐れがあります。
通常と長周期地震動による揺れ
通常と長周期地震動による揺れ

損保ジャパン本社ビルでは、災害時にいち早く機能するという損害保険会社の社会的使命を果たすため、ビルの建設から運用にいたるまで「防災」思想に基づいた取り組みが行われており、今回の長周期地震動対策はその一環として実施されることになりました。

東日本大震災

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント
技術支援部 担当部長 安江 新治 様

一昨年の東日本大震災(3.11)では、都内の多くの超高層ビルが長周期地震動に共振して大きく揺れ、その危険性が改めて認識されました。損保ジャパンの本社ビルも2mの幅で揺れましたが、将来の発生が懸念される東海地震では、震源がより近いためこの倍の揺れが想定されています。
当社は、3.11の数年前から本社ビルにおける長周期地震動対策の必要性を認識して詳細な検討を重ね、一昨年の震災時にはすでに実施の準備を進めていましたので、いち早く対策工事に着手することができました。

大成建設様には、本社ビルに長年寄り添う“主治医”として、「損保ジャパンのBCP(事業継続計画)で本社ビルに求められる耐震性能をかなえるために最適な方法は何か。」という視点で当社とともに考えていただき、オリジナル制震技術である「T-RESPO構法」により長周期地震動に対する安全性を向上させるという具体案を実現させることができました。
損害保険会社は災害時に確実に業務継続を図ることが大きな社会的使命であり、その要になる本社ビルの耐震性確保に当たっては、確率統計的アプローチという難しい課題も大成建設様にお願いしましたが、みごとな解を提示していただきました。

株式会社損保ジャパン・ビルマネジメント 技術支援部 担当部長 安江 新治 様

制振技術

東日本大震災で効果を発揮した制振技術

大成建設が共同開発※2した制震技術「T-RESPO構法」は、独自の制震ダンパー※3を建物内に組み込むことによって、超高層ビルの弱点である長周期地震動の揺れを抑え、建物の構造部分の損傷を防ぐことを目的としています。既存の超高層ビルの長周期地震動対策として、世界で初めて新宿センタービルに導入され、東日本大震災時にはビルの揺れ幅をおよそ22%低減できたことが分かっています。

「T-RESPO構法」にはブレースタイプと間柱タイプがあり、建物の形状や目標とする耐震性能レベルに応じてフレキシブルに対応することができます。

  1. ※2「T-RESPO構法」は、大成建設株式会社、株式会社構造計画研究所、カヤバシステムマシナリー株式会社の共同開発です。
  2. ※3制震ダンパー:一般に、ばねやゴムのような弾性体などを用いて、衝撃を弱めたり、振動が伝わるのを止めたりするための装置をダンパーと言います。特に、地震による建物の揺れを低減するダンパーを制震ダンパーと言います。
T-RESPO構法
  1. ※4軸力制御オイルダンパー:油圧で地震のエネルギーを吸収する制震ダンパーです。建物の揺れの大きさに応じてダンパーの力を変えることができるため、柱や梁、杭などの構造部分に過剰な力がかかるのを防ぎ、また、設置する際に既存の柱や梁などを補強する必要がありません。

大成建設は、「損保ジャパン本社ビルのどこに・どれだけ・どのように制震ダンパーを組み込むと最も有効であるか」「建物を使いながら、お客様の負担にならないよう施工するにはどうすべきか」など様々に検討を行った結果、本社ビルの地上9階~40階までの各フロアに最大で16台(計348台)の間柱タイプの制震ダンパーを新設するように計画しました。これにより建物に伝わる地震エネルギーの約30%を制震ダンパーで吸収し、東日本大震災の約4倍のエネルギーの強さの地震が起きても、柱や梁などの構造部分を損傷しません。
現在、2014年12月の完成を目指して、お客様の業務を停めることなく安全に工事を進めております。

東日本大震災以降

設計本部構造計画グループ 青野 英志

東日本大震災以降、南海トラフ沿いの巨大地震の発生が危惧されており、東京・名古屋・大阪などの大都市では長周期地震動により超高層ビルの揺れが長時間続くことが予測されています。
BCP対策や、長周期地震動という新たな脅威に対する意識が世間で高まる以前より、損保ジャパン本社ビルではつねにBCPを意識した中長期営繕計画が立てられ、実現されてきました。

今回のプロジェクトでは、「“損害保険会社の本社ビルの長周期地震動対策”であることを意識して、通常の耐震レベルよりも高い水準で提案してほしい」というお客様のご要望に対し、例えば制震ダンパーを設置する箇所や個数によって、建物の揺れや、制震ダンパーによる地震エネルギーの吸収がどう異なるかなど、詳細な構造解析結果に基づいて明確にお答えするよう努めました。

「大成建設に疑問や課題を投げかけると、納得のいく回答をきちんと示してくださるので、安心して任せることができます」と評価いただくことができ、嬉しく思います。

株式会社損害保険ジャパン

工事概要

発注者 株式会社損害保険ジャパン
建物名称 損保ジャパン本社ビル
所在地 東京都新宿区1丁目26-1
竣工 1976年4月
延面積 124,485.21㎡
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