札幌ドーム

雪と共生して築かれる雪国のドーム。

札幌ドーム

札幌ドーム

3年の工期のうち1年間は雪の中

札幌市の郊外、クラーク博士の銅像が建つ羊ヶ丘の北麓で、2002年のワールドカップ開催に合わせ札幌ドームの建設が進められました。北海道初の大型ドームは、世界で初めて導入されたホヴァリングステージによって、野球やイベントだけでなく、サッカーの試合までもがドーム内で開催可能となっているほか、雪を積もりにくくしたシェル型の屋根を採用したり、ドーム西側に防風・防雪林を配置するなど、雪国の気候に十分備えている。しかし、工事は雪との闘い抜きには語れないものとなった。

造成の様子
造成の様子
外観工事の様子
外観工事の様子
内部工事の様子
内部工事の様子

「3年という工期の中で冬が3回訪れるわけですが、札幌では12月から3月の4カ月間は積雪のため、トータルすると工期中1年は雪の中。つまり雪や凍結の影響を受けずに自由に作業ができるのは毎年4月から11月までの実質2年なのです。そうした雪と工程の調整が非常に難しい工事となりました」と朝川和憲作業所長は雪に悩まされた工事を振り返る。

「特に屋根を支える鉄骨の建方や屋根の取り付けは、雪の中では非常に困難な作業であるため、雪の降らない8カ月の間に終わらせなければなりませんでした。そのためには屋根鉄骨の前段階までは冬期間にすませる必要があり、30,000m3を超えるコンクリートを厳冬期に打設するため、寒中コンクリートの品質管理には特に気を使いました。

また、屋根下のテンションリングには極厚のH鋼が使われており、厳冬期に行う溶接の問題点を解決するため実大モデルによる実験や、冬期間のシール施工実験、屋根上の雪の落雪状況を検証するための実験など、積雪寒冷地ならではの実験を数多く行いました」と朝川作業所長。また、初年度は例年になく早い積雪、翌年は観測史上に残る大雪、そして3年目は例年にない寒さと毎年厳しい気候に見舞われたという。

そうした気候はサッカーグラウンドの天然芝の育成・計画にも影響をもたらした。

「サッカーの天然芝グラウンドも、すぐに使用できる状態でお客様に引き渡さねばならないため、逆算すると2000年の8月1日に芝の種をまいておく必要がありました。そこで、ホヴァリングステージの着工を早めるために除雪を行い、さらに工業化、部材のユニット化などあらゆる省力化を図りましたが、それでも昼夜交代制の施工になりました。また、天然芝は当社のノウハウによる種子設計(配合)を行った寒冷地型のものになっています」
(中田慎吾工事次長)

朝川和憲 作業所長
朝川和憲 作業所長

世界初「ホヴァリングステージ」

前例のない設備の工事で先駆者として試行錯誤

一方、注目のホヴァリングステージに関して小椋伸幸工事課長は次のように語る。

「ホヴァリングステージは世界初の設備ということで、どこまでやれば完璧なのかわからない状態での作業であったため、試行錯誤の連続でした。それだけに、2000年5月の試運転でサッカーグラウンドのステージが実際に動いたときは感動しましたね。

ステージの移動、稼動席、出入り用の扉であるムービングウォールなど、個々の設備の試運転では大きな問題はありませんでしたが、ホヴァリングステージはこれらすべての動きが一連の流れの中でスムーズに動き、野球場からサッカー場への場面転換ができてこそのもので、個々の設備が個々に動いても無意味なのです。2001年4月に場面転換の試運転が行われるのですが、それが終わるまでは予断は許されませんでした」。

ホヴァリングステージ
ホヴァリングステージ

さらに中田工事次長は「モノをつくるのは当たり前で、それに加えてホヴァリングステージの性能を確かめ、操作オペレーション、転換の所要時間などの運営のノウハウも発注者に提供し、引き渡すのがコンペ時の約束事なのです。そうしたCSをこの作業所でさらに強く認識するようになりました。結果として、当社のグループ会社が竣工後も可動の運用管理を委託されることになりました」と語る。

このほかにも「寒冷地でもJリーグのシーズンを通して試合が開催できるよう、サッカーグラウンドの下に雪を溶かすための電熱線を敷設したのですが、これも前例のないもので、当社の技術研究所(当時)から助言をいただきながら、施工方法を工夫することが多かったですね。また、空調的には寒冷地ドームの温熱環境のあり方を追求するため、多くの試みがなされています。今後これらのデータが当社の技術として生かされるものと思います」(畑中文夫設備副部長)。

「地元のみならず世界的にも関心の高い施設だけに、見学者は約16,000人(2001年4月現在)を数えています。平均すると1日3組、多い時は1日で7組の見学者が訪れたこともありました。その対応と時間調整にとにかく苦心しました」(荒川裕紀事務課長)と、この工事の特性はさまざまな局面に表れている。

地元の大きな期待を受けて2002年6月2日にオープンした札幌ドーム。多くの所員から「本当にすばらしい施設です。ぜひ観にきてください」との言葉が異口同音に聞かれた。

ホヴァリングステージ

縦120m、横85m、重さ8,300tの巨大な天然芝のステージが、空気圧によって7.5cm浮上し、34個の車輪でデュアルアリーナ間を分速4mで移動。天然芝のステージは試合のない時は屋外のオープンアリーナで良好な芝を育成します。

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工事概要

発注者 札幌市
所在地 札幌市豊平区羊ヶ丘1番3ほか
ドーム最高高さ 68m
建築面積 53,644.45m2
延面積 93,270.92m2
工期 1999年6月3日~2002年5月31日
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