~“東京都初の試み”への挑戦~

公有地を担う誇りと責任
南青山一丁目団地建替プロジェクト

「南青山一丁目団地建替プロジェクト」

「都市開発」

南青山一丁目団地建替プロジェクト

「都市開発」。

並みいる大手ゼネコンの中で、もっとも大成建設が得意とし、自負する分野だ。
10年1事業と言われるこの大仕事に、情熱を傾け、運命を賭け、まちづくりに駆け回る人々がいる。
今回は、民間都市再生事業に取り組み、都営南青山一丁目団地の建替を実現させた人物を紹介する。

“青山Days Creators”結成まで

青山一丁目駅前、都心の一等地に広がる公有地。ここにはかつて都営団地群が棟を連ねていたが、老朽化が進むとともにそのほとんどが取り壊され、有効活用されていない状況だった。

本来なら高度有効利用が可能なこの地を、このままにしておくわけにはいかない――

青山一丁目周辺
青山Days Creators

2001年8月、東京都は事業期間70年で公有地を民間事業者に貸し、団地の建替や新たな民間施設の建設、運営までを任せる初のプロジェクトを打ち立て、民間事業者をコンペで選出することを公表する。これを受け、大成建設、三井不動産、伊藤忠商事らがグループを結成してコンペ参画を決意。「自分達の手で、新たな青山の都市生活を創っていこう」という志の下、グループ名は“青山Days Creators”と名づけられた。

短期決戦をくぐり抜け掴んだ勝利

青山Days Creatorsの他にも、5グループがコンペに参加。都市再生の先駆けとなる大規模なプロジェクトだけに、競合先もそうそうたる顔ぶればかりだ。

「都営住宅や保育園、図書館などの公益施設と、高収益な民間施設からなる複合施設をつくり、高度利用を可能にしたい」という東京都の希望に応えるべく、各グループがそれぞれに策を練る。

民間賃貸住宅棟に配置された港区の図書館
民間賃貸住宅棟に配置された港区の図書館
内装

高度利用を可能にするためには、総合設計制度を活用して高層タワーにしなければならないのは当然のこと。しかし、敷地の地下には都営地下鉄大江戸線が横断していて、タワーを1棟にする案だと建築コストが大幅にアップし、事業性の低下を招いてしまう。そこでグループ内協議の末、都営住宅棟と民間賃貸住宅棟を2棟に分ける案を採用し、借地料に審査得点の的を絞る戦略が決定された。この結果、東京都が当初予想していた借地料を大きく上回る数字を提案することができたのだ。コンペ要綱が公表されてから提案まで、わずか5ヶ月というスピード決戦だった。

コンペの結果は、東京都知事自らが定例記者会見で発表する。会見が行なわれるその日、都庁エントランスホールの大画面モニターをじっと見守る女性がいた。チームメンバーとして企画立案に奮闘した一人、大成建設PFI推進部の有馬孝子だ。会見の生中継が始まり、モニターに映し出された都知事が当選グループの名を読み上げた時の気持ちを、有馬は次のように語ってくれた。

外装
インタビューの様子

「知事が、私達のグループ名を読み上げた時の感激は、今でも忘れられません。支払地代が一番高く、提案内容も非常に優れていると講評され、これまでの努力が報われた思いでした」

有馬はすぐに会社に電話し、結果を報告した。その報告は役員会に出席していた上司にも伝達され、役員会の場も吉報に沸きたったという。「都市再生の先駆けとなるプロジェクト」と都知事が評した記念すべき初のコンペに、見事大成建設らグループが勝利を掴んだのだ。

苦戦の末の着工

コンペ当選後、すぐに各社からスタッフが派遣されることになる。大成建設からは、鈴木隆博(現PFI推進部)に白羽の矢が立てられた。鈴木は別部署にいたためプロジェクトに関してほとんど知らず、事務局入りする日まで、他のスタッフとの面識もなかったという。

「とりあえず“コンペ提案を実現するだけ”という軽い気持ちでした。ところが、実現する段階になってみると、課題や調整事項が次々と持ち込まれて、対応していかなければならない。事務所の電話が鳴るたびに、つぎはどんな難題が持ちこまれてくるのだろうと、怖くて電話を取るのが嫌だったのを覚えています」と鈴木は語る。

コンペ提案を実現することに加えて、周辺や各施設からの要望や許認可対応、民間施設の価値向上のための見直しなど、合意形成を得るために駆け回る日々が続いた。特に辛かったのは、「我々スタッフの出身会社の利害がぶつかる時」だ。

都営住宅棟に配置された港区の保育園
都営住宅棟に配置された港区の保育園
民間賃貸住宅棟1階のハーブティーカフェ「PHAR+MARCH?」にて
民間賃貸住宅棟1階のハーブティーカフェ「PHAR+MARCH?」にて

「でも、ずっと一緒にやっていると、とにかく事業をうまく進めようというスタッフ同士の一体感が生まれてきて、それで吹っ切れていきました」
鈴木らスタッフの苦労が実り、調整に次ぐ調整の結果、2004年3月、ついに工事着工にこぎつける。このプロジェクトに参加した感想を、鈴木は次のように語ってくれた。

「このような先駆的なプロジェクトに参加できたのは、とても幸運だったと思っています。色々な課題が解決されていくことを経験して、自分が事業に対して怖がりでなくなった気がしています。それがとても大きな財産です」

南青山の新たな“顔”を守り続ける責任

2007年1月、都営団地の跡地に2棟のタワーが竣工を迎えた。1棟は都営住宅となり、低層階には明るい光が差し込む保育園やグループホームが配置され、もう1棟は46階建てのタワーとなり、ハイグレードな賃貸マンション、図書館、大学、その他商業施設が配置されている。青山圏内では一番の高層タワーで、“青山の新たな顔”と呼ぶにふさわしいものだ。完成の喜びはさぞ大きいことだろうと、有馬と鈴木に感想を聞くと、2人は真剣な表情で次のように語った。
「手放しで喜んでもいられません。完成してこれからが、真価が問われるとき。この建物が永く魅力ある施設であり続けるためにどうすればいいか、“新たな青山の都市生活を創っていく”ためには、日々努力が必要なのです」

南青山の新たな“顔”

国の“民間都市再生事業計画”でも認定第1号

南青山一丁目団地建替プロジェクトは、東京都が公有地再生に初めて民間の活力を導入するモデルケースとして注目を集めているが、併せて国土交通大臣より“民間都市再生事業計画”の第1号に認定された。民間都市再生事業計画とは、都市再生特別措置法に基づき、市街地の整備を緊急に推進する上で効果的であり、かつ、都市の再生に著しく貢献する事業計画に対して国土交通大臣が認定を与えるもの。国からもその取り組みを高く評価された格好だ。

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