大成ブランドマンションへの挑戦 横浜白楽レジデンス

横浜白楽レジデンス

「都市開発」

横浜白楽レジデンス


「都市開発」。

並みいる大手ゼネコンの中で、もっとも大成建設が得意とし、自負する分野だ。
10年1事業と言われるこの大仕事に、情熱を掛け、運命を賭け、まちづくりに駆け回る人々がいる。
今回は、横浜市神奈川区白楽での分譲マンションプロジェクトに携わった担当者を紹介する。

はじめに

 東急東横線の白楽駅から徒歩6分、趣のある坂を上るとそのヒルトップには大きなケヤキの木をシンボルツリーに配した、奥行きのあるマンションのエントランスが広がっている。風合いの良いタイルに彩られたマンションは、道行く人が思わず足を止めて見入ってしまうほどの邸宅感を醸し出している。

 東京の城南五山や、横浜の山手地区などに代表されるように、昔から丘の上の住宅地は眺望や地盤の良さから人々に好まれ、高級住宅が建ち並ぶ憧れの場所となっている。駅からほど近く、横浜みなとみらいから富士山までを望むことができる希少な土地に、その魅力を最大限に生かした美しいマンションが建つまでには実に20年超もの歳月を要した。

横浜白楽レジデンス全景
横浜白楽レジデンス全景

大成ブランドによる分譲マンション事業への参入

竹田 茂
竹田 茂

大成建設は1970年代には首都圏郊外部においてグリーンハイツという団地型の分譲マンション事業を行っており、トータルで約8千戸の分譲実績を持っていた。その後、分譲マンション事業は関連会社である有楽土地株式会社(現大成有楽不動産株式会社)がその役割を担ってきており、大成建設自身が売主となった分譲マンション事業はほとんど行ってこなかった。

 2007年、これまで蓄積した技術力を活かして自社ブランドを確立せよという会社の命を受け、大成ブランドマンションプロジェクトが立ち上がった。この責任者として指名されたのが大成建設 開発事業部の竹田茂である。

開発許可取得への高いハードル

 大成ブランドマンション事業を推進するべく第一号案件としてセレクトされた場所は、大成建設の社宅用地として使用されていた横浜市白楽の土地であった。「なんて素晴らしい立地だろう。」竹田は、初めてこの場所を訪れたときに思わずそうつぶやき感嘆した。目の前に広がる解放感ある眺望、丘を流れる爽やかな風、見わたす限りの広い空。この場所ならば素晴らしいマンションがつくれると竹田は確信した。

 しかし、その思いとは裏腹にこの土地に潜む数多くの開発阻害要因に竹田はその時はまだ気付いていなかった。

 大成建設は1991年にこの土地を購入し、その後戸建の社宅を建てて利用していた。マンション適地であるのになぜこのような利用をしているのか竹田は不思議に思ったが、当時を知る担当者は退職するなどして社内には残っておらず、詳細はわからなかった。そこで竹田は土地の権利関係を細かく調べるとともに、過去の社内記録を一つ一つひも解いていったところ、驚くべき事実が判明した。マンションとしての開発が極めて難しい土地だったのである。

 その理由として、前面に接する道路部分の査定がなされておらず、道路の位置と形状が決まっていなかったのだ。当然開発行為や建築に必要な前面道路幅員が決まらなければ開発は難しくなる。なぜ査定がされていなかったのか?さらに調査を進めていったところ、計画地と道路を挟んだ反対側の10名もの所有する土地が横浜市の図面で記載されている道路部分に大きく入り込んでいたのである。反対側の土地の所有者にとっては、その境界ラインを認めてしまえば自分の土地が大きく減ってしまうこととなる。話を聞けば、その境界ラインは不当として、土地所有者たちは横浜市に対して既に50年近くも認めていないということだった。これでは簡単に道路査定の同意をとることは難しい。

 さらに道路の問題は、査定の有無だけではなかった。現況で通り抜けしていると思っていた前述の道路が、測量をやり直し土地の公図と照らし合わせると、道路の途中に第三者の土地が介在し、権利関係上道路そのものを塞いでいたことが発覚したのである。また、道路と思っていたその土地自体が実は道路ではなく下水道用地で、そもそも計画地そのものが道路に接していなかったのである。

 1991年当初この土地に取り組み始めたときは、境界確定のハードルすら超えることができず、開発許可の取得を諦め、開発許可の必要のない低利用の範囲で戸建を建て社宅として長い間使用されてきたのであった。

道路 権利関係 模式図

道路 権利関係 模式図

竹田は語る。「ここで引き下がる訳にはいきません。10名の土地所有者のところに1年間通い詰めて何とか境界ラインの確定に応じて頂きました。道路を塞いでいる土地も交渉を重ねて取得することができ、取得・開発後は道路に移管することで整理がつきました。また、下水道用地を道路として認定してもらえるよう横浜市とも何度も協議を重ね、開発のスタートラインに立つことができました。」

 こうして大きなハードルを乗り越えていったが、さらに困難なハードルが待ち受けていた。

 計画地は丘の上であるため、敷地の高低差が大きく、自然の地形を生かしながらも盛土や切土をしなければ建物が建設できない形状であった。そのためには土地取得時には諦めた都市計画法の「開発許可」を取得しなければならない。開発許可には行政との協議を整えるとともに周辺住民から一定の理解を得る必要があったが、 戸建てが立ち並ぶ閑静な住宅地内におけるマンション開発ということで、周辺からは辛辣な意見が集まった。

 「適した土地があるからそこに最有効利用の建物を建築するという開発者の思いだけでは事業は推進できません。 この土地は第一種低層住居専用地域内で戸建住宅中心の閑静な住宅街。ここに3階建てとはいえ延面積2,000坪の共同住宅を計画したのだから、 ある程度の抵抗はあるのだろうと覚悟していましたが・・・。」(竹田)

 竹田がこの案件を担当してから土地の商品化の実現、すなわち建物が着工するまでには、4年の月日が流れていた。

「ひとつ上の安心」という価値を提供する

 設計・施工だけでなく大成建設が事業主として主体的に取り組む久しぶりのマンション事業である。事業を推進する都市開発部門が中心となり、社内の設計部門、建築部門、環境部門をはじめ、企画・販売実績がある関連会社の有楽土地株式会社(現大成有楽不動産株式会社)の各部門のプロフェッショナルが集まって進められた。

 「大成建設の技術力・企画力を生かし、お客様にお届けできるものは何か。」という議論を徹底的に積み重ねた結果、見解の一致したテーマが「『ひとつ上の安心』という価値。」であった。

 大成建設がつくる安心できる構造体、将来の更新を見据えて永く安心して住まうことのできる建物設計。企画・設計・施工・販売・アフターサービスまで含め、大成建設グループが全てを担う安心感。その全てにおいて、お客様の安心を第一に考え、その安心を積み重ねることによって生まれた価値を感じてもらいたい、提供したい。それが本件の大きなテーマとなっていった。

 「考え抜いたテーマを現実のものとするため、長期優良住宅の認定と補助事業の採択に挑戦する。私達はそう決めたのです。」新入社員でいきなり本プロジェクトを担当することになった大成建設開発事業部井上美奈はそう語る。

 法律に基づく「長期優良住宅」に認定されるためには、耐震性、可変性、劣化対策、維持管理の容易性など9つの認定基準をクリアしなければいけない。当時は、認定取得のためにコストアップした建築費を分譲価格に反映できないとして、分譲マンションで認定を取得した事例は数件にも満たなかった。

井上 美奈
井上 美奈

 さらに、国土交通省の補助事業である「長期優良住宅先導事業」は「長期優良住宅」としての基準をクリアした上に、建物の長寿命化に寄与する更なる先導的提案を行い、いくつか応募があった中から優秀な案件が選ばれるというもので、極めて狭き門である。「取り入れたい技術は多数ありましたが、一方で工事費を予算内に収めなければ事業は実現しません。各部署の担当者が集まる打合せは深夜に及ぶことも多々あり調整には本当に苦労しました。」(井上)。

 試行錯誤するなか「快適性」「継続性」「可変性」「環境配慮」「維持管理」の5つのキーワードをもとに建物の計画を進め、多数の技術やきめ細やかな工夫を織り込むことで、本プロジェクトは2009年5月「長期優良住宅」の認定を取得し、「長期優良住宅先導事業」として採択されることとなった。

計画コンセプト概念図

計画コンセプト概念図
TWFS構造模式図

『TWFS(厚肉壁床)構造』

室内に柱・梁が出てこないため、自由度が高く開放的な空間を実現できる。なお、極めて稀な大地震を想定しても倒壊しない建物強度である『耐震等級2』を取得している。

  • TWFS構造:Thick Wall and Floor Structure

『マルチシャフト』

隣り合う住戸の中央部に吹抜けを設け、その部分に排水等の設備配管を集約することで、室内に立ち入ることなく外部からメンテナンス更新を可能とした。

マルチシャフト模式図
マルチシャフト模式図

販売への挑戦、そして引き渡しへ

原寸サイズの構造模型
原寸サイズの構造模型

大成建設が売主となり、先陣を切って主体的に販売に取り組むことは初めて経験することばかりであった。販売にあたっては、色々な工夫をしたが、中でもマンション業界では初となる原寸サイズの構造模型と、実際に建物を創っている「人」に焦点を当てた折込チラシが非常に好評だった。

 販売も順調に進み完売。入居説明会や内覧会を経て、2012年11月末日、お客様に「横浜白楽レジデンス」を引渡した。竹田が本件プロジェクトに着手してから5年半の歳月を経て、ようやく建物の竣工・引渡しが叶った。

関係者が集まって撮影した折り込み広告
関係者が集まって撮影した折り込み広告

担当者の声

「入社してすぐにこのプロジェクトの担当となり、丸3年間は困難に次ぐ困難で、本当に計画地にマンションを建てることができるのか、と思うことが何度もありました。しかし、着工して頭の中に描いていたビジョンが現実のものとなり、実際にお客様が住みはじめた時の喜びと達成感は言葉にはできません。困難を乗り越えてきたからこそ成長もできたのだと感じています。実際にお住まいになられたお客様からは、この物件を購入し非常に満足しているという声を多数お聞きします。お客様からの喜びの声は何より嬉しいものです。」(井上)

「現在第2号案件が東京都中央区明石町で完成しました。この経験を活かして案件を増やし、大成ブランドをより強固にしていきたいと思います」(竹田)

関連情報

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