先端技術教育を展開する拠点をつくりたい。

世界に存在感のある大学を目指す。
お困りごと
- 高度化する先端技術教育を展開していくため、都心にある後楽園キャンパスに理工学部の研究実験施設を建設し、今後の研究拠点として活用していきたい
- 新設学科の授業開始にあわせて、施設の一部を引き渡しできる施工計画で工事を進めてほしい
- 同じキャンパス内にある附属の高等学校専用の体育館を収容したい
これらの課題を一度に解決するベストな方法を提案してほしい。
成功事例
学校法人中央大学様が運営する中央大学は2010年に創立125周年を迎え、21世紀に新しい社会を創造する世界に存在感のある大学を目指して、都心の教育活動の拠点である後楽園キャンパスを整備されることになりました。
後楽園キャンパスの正門を入ってすぐのところに建つ新2号館は、理工学部における各学科・大学院の教育研究体制のさらなる充実を図るとともに、高校専用の体育館のスペースを確保することを目的として計画されました。2011年に大成建設の設計・施工で完成しました。


ソリューション
さまざまな施設用途を許容する建物フレーム
理工系大学の研究実験施設や高校専用の体育館など、幅広い用途に求められる性能をすべて満たすため、長辺方向3.2m、短辺方向21mスパン※1を基本グリッドとするロングスパン架構を採用しました。当初は研究施設として一般的な10m程度のスパンで建物を構成する計画としていましたが、2倍のスパンとすることで、大空間である体育館のスペースを利便性の良い地階・1階とすることが出来ました。
※1 梁などの、支点柱と支点柱との間の距離のこと。



室内レイアウトや設備の変更・更新にスムーズに対応
今後数十年にわたり建物を使い続けるうえで、常に高いパフォーマンスと利用効率を発揮するために、建物内には設備の固定シャフトを設けない計画としました。さらに、将来起こりうる間仕切り位置の変更や、実験機器やそれに伴う設備計画の変更・更新などにフレキシブルに対応可能な計画としています。
建物内の固定シャフトに代わり、研究や実験に必要となる設備機器の配管を集約するスペースとして、各階の研究室・実験室に対して「メカニカルバルコニー」を配置しました。
このメカニカルバルコニーは屋外空間であるため、外部から容易にアプローチする事ができます。将来、設備配管の増設が必要となる際にも、建物内に影響を与えることなくスムーズに対応できる体制を整えました。

また、自由に実験・研究室を配置できるよう、旧2号館と同等の低振動環境を、新2号館の高層階でも再現できるようにしました。短工期が条件であったため一般的には振動しやすいS造を採用し、かつ、更新性に配慮して21mのロングスパンを採用しました。
振動対策として、3.2mの細かいピッチでメインフレームを組み、梁に振れ止めを入れ、低振動エリアには中間柱を入れて問題を解決しました。
省エネに対応した景観づくり
建物の外装には、鋼板パネルで構成した基本外壁の外側にメカニカルバルコニーを設置し、さらにその表層にはテラコッタルーバー※2をセットしました。これにより、窓際の特殊な空調を要せず、遮光性に優れた環境性能の高い外装を実現しました。
※2 テラコッタルーバーは、建物の外側に設けることでブラインドの役割を果たす外壁材です。ルーバー(遮光や通風のために隙間を開け、羽根板を水平に並べて取り付けたもの)の材質をセラミック製(テラコッタ)とし、取り付け金具を施したものです。遮光に有効であるばかりでなく、装飾にも優れた外観を実現します。

設計本部建築設計第一部設計室 中藤 泰昭
新2号館は、後楽園キャンパスを入るとすぐ目の前にそびえる「キャンパスの顔」となる建物です。そのため、理工学部らしい先進性を創出すると同時に、緑豊かな文教エリアである春日通りの景色に溶け込んでいくような外観デザインを目指しました。
採用したテラコッタルーバーは、近隣の建物との距離が近い立地において目隠しの役割を担うだけでなく、配管のメカニカルな表情とともに自然素材ゆえのあたたかみを外装デザインに付加しています。また、今回の建設に伴い伐採された樹木を再利用してつくったベンチなどを新2号館内外に配置することで、継承と創造を表現した建物づくりを目指しました。
超短期間での利用開始プログラム
新設学科の授業開始スケジュールに合わせ、プロジェクトの開始から15ヶ月で新2号館の部分引き渡しを行い、22ヵ月で建物の全体を完成させる計画を、設計・施工部門の担当者が一丸となって行いました。
先行部分には設備のメインシャフトや主要機器を配置し、分電盤を分散して配置計画を行うなど、安全かつ確実に部分引渡し後の施工が可能な計画を行いました。また、学生の安全性を最優先に考えて工事の動線計画と安全区画を形成し、施工しながらでも新2号館の一部を利用できるようにしました。
工事概要
発注者 | 学校法人 中央大学 |
---|---|
所在地 | 東京都文京区春日1-13-27 |
竣工 | 2011年8月 |
延面積 | 17,359.28m2 |
URL |
- ※本コンテンツに記載された情報(役職、数値、固有名詞等)は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。
中央大学
理工学部教授(前理工学部長) 石井 洋一 様
新2号館には、現在、理工学部における全10学科のうちの4学科(生命科学科、人間総合理工学科、精密機械工学科、都市環境学科)のための研究実験施設が収容されています。
新2号館を建てる以前には旧2号館を利用していましたが、築50年ほどを経ており老朽化が進んでいました。2008年には生命科学科をオープンし、新しい学問を研究するにふさわしい最先端の教育研究施設をつくる必要性もでてきたことから、学内で協議をした結果、新2号館を建設し、都心キャンパスにおける教育研究施設の中核として活用することが有効であるとの結論となり、今回のプロジェクトの構想が決定いたしました。
数社によるコンペを実施し、「建物が完成した後でも、例えば室内のレイアウト変更など、お客様のご要望に柔軟に応えられる施設づくりを実現します」という大成建設の提案に安心と魅力を感じましたので、パートナーに選定いたしました。