品質向上と生産の高効率化をめざし生産システムを構築

お困りごと
既存工場では、大型液晶テレビの偏光板を製造するため、巨大フィルムロールのハンドリングや高度なパーティクル制御などこれまでの経験や技術の延長線上では解決できない多くの問題が発生している。
製品品質向上と生産の高効率化をめざして、製造装置、建築、搬送システムが一体となった新しい工場構築の取り組み(トータルエンジニアリング)により革新的な工場を作って欲しい。

成功事例
液晶フラットパネルに欠かせない「偏光板」。
(株)サンリッツ様はその偏光板開発・製造分野での日本におけるパイオニア企業です。
きっかけは既存工場の不具合を大成建設の技術力を使っていかに改善するかという技術プレゼンテーションでした。その技術プレゼンテーションで大成建設のさまざまな製造施設構築に関する技術力をご納得いただくことができました。
そうした中で、今回の新工場建設プロジェクトが立ち上がり、大成建設にご相談いただくこととなりました。
製造施設、特に電子デバイス分野の工場では、装置・建屋・搬送という各部分を分割して計画することでとかく「部分最適」に陥りがちです。
今回の新工場プロジェクトのプレゼンテーションでは、生産プロセスを十分に把握し、装置・建屋・搬送を全体的に一体で計画することで、「全体最適」を目指した高効率な生産施設を実現するという大成建設のトータルエンジニアリング力を中心にご理解いただきました。
その結果、超短期間で手戻りのない高品質な新工場を立ち上げるには、大成建設の《エンジニアリング+建設=総合力》を活用するのが最適であるとの決断をいただきました。
サンリッツ様のご要望
- 超短期間での工場立ち上げ
- 将来的な需要拡大が見込まれる大型液晶テレビ用の偏光板を製造する新工場を計画から生産開始まで超短期間で実現
- 高品質・高性能
- 生産環境向上による製品品質の向上と安定化、大型フィルムロール自動搬送システムの採用による生産効率の向上と安定稼働
- 環境配慮
- 臭気・排水等の周辺環境負荷の低減。高効率熱源システムやクリーン局所化などの採用によるエネルギー、CO2排出量の削減

ソリューション
トータルエンジニアリングとは「全体最適化」を可能にする
電子デバイス工場の建設において、精密でレベルの高い施設構築が求められるため建築、生産装置、搬送システムの専門担当者がそれぞれのシステム最適化を図っている。この場合それぞれの部分は最適化するものの、建築、生産装置、搬送システムの境界部分での安全率や余裕の重なりが発生し、システムが大型化しがちである。
大成建設のトータルエンジニアリングの場合、工場全体を一体と捉え、とり合い部分の重複を可能な限り削減し、工場全体で効率的かつミニマムなシステムの構築が可能となり、「全体最適化」を実現することができる。
施設全体の最適化をはかるトータルエンジニアリング

- 個々の最適化
- 安全率・余裕の重なりによりシステムが大型化
- 全体最適化
- 工場全体を一体と捉え、とり合い部分の重複を削減しミニマムなシステムを構築
建築・設備・エンジニアリングの各パートのコンビネーションがよく、予期せぬ工程の遅れ(大雪など)に対して効率的な工程管理ができる
計画からメンテナンスまで、効率的な人員配置を行える
計画から生産開始まで14ヶ月の超短工期で実現
- 約1ヶ月で基本設計図を完成し、プロジェクトをスタート
- 工事の進捗に合わせながら詳細設計を行うために設計者が現場に常駐
- フラットパネル市場の求めるタイミングに合わせて操業したいという発注者の要望に応え、“垂直立ち上げ”(工事完了直後からすぐに製造できるようにする)を実現
偏光板工場の設計手法の確立
局所クリーンシステム採用等により高度生産環境を構築
自動ラック倉庫、AGV、自動チャックシステムなどの高効率な生産物流システムを構築
- 自動ラックを中心とした効率的なレイアウト計画
- 生産装置の最適配置、メンテナンススペースの最適化
- 無人化によるクリーン度の向上


臭気・振動・気流・騒音等のシミュレーションデータを検証し設計に反映
- 脱臭装置は拡散を考慮し屋上へ配置
- 近くを走る北陸本線が与える生産設備への影響は振動測定することにより確認
- 清浄度が要求される生産設備は局所クリーン化し気流チェック
- 騒音室が隣室に及ぼす影響も事前チェック

大成建設担当者より
工事概要
発注者 | 株式会社 サンリッツ |
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所在地 | 富山県下新川郡入善町下上野40-1 |
竣工 | 2006年4月 |
延面積 | 38,001m2 |
URL |
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エンジニアリング本部 上田 俊彦
大成建設のトータルエンジニアリング力を如何なく発揮できたプロジェクトでした。
サンリッツ様からのさまざまな要望に対し短期間で満足のいく回答をだすために、製造システムから建物の設計・施工・メンテナンスまでを一貫して対応するプロジェクト運営を行いました。
設計部門、エンジニアリング部門、技術開発部門が一体となり、製造システムや工場運用に踏み込んだエンジニアリングを行うと共に、気流、騒音、振動などの高度なシミュレーション技術の活用により、高品質でレベルの高い製造・搬送システム及び製造環境の設計を短期間で行うことが出来ました。
施工においては、近年まれにみる豪雪に見舞われたものの、生産装置・搬送システムと建物との同時施工やクリーン化施工により工場の垂直立ち上げを行うことができました。また、工事途上からメンテナンス要員を育成し、竣工直後から工場施設運用管理業務をサポートしています。
工場稼動後もサンリッツ様とのコミュニケーションは続いています。製造システムの高性能化、省エネや施設管理の高効率化など更なるニーズに対して大成建設の総合力で対応を続けています。お客様の信頼を得、お客様とニーズを具現化することが、我々大成マンの喜びだと思っています。