地域ブランドプロジェクト

『地域ブランドプロジェクト』とは
近年、国主導のもと地方創生が叫ばれ、地域貢献する中小企業を補助する中小企業地域資源活用促進法(いわゆる地域資源法)や地場固有の生産品に付加価値をつける地域商標登録制度など、地方と企業との互助的な発展を支援する行政制度が施行されています。企業活動においては、単なる利益追求型の経営ではなく、CSR や CSV※など地域や社会への貢献活動や問題解決と事業を直結させることで、企業のブランドイメージを向上させ、長期的な利益に結びつけながら地域を再生させる事例が生まれ始めています。
このように、各地域の企業における商品のブランド化と地域イメージのブランド化を融合し、持続的な地域経済の発展に貢献するプロジェクトをわれわれは、『地域ブランドプロジェクト』と名づけます。そのため、企業のブランディングに取り組む際には、地場の産業や地域の文化との関わりを深く掘り下げ、企業と地域の共創的な価値向上に取り組むことが求められます。
また、地域における個々のブランド(地域資源)がバラバラに発信されるのでなく、統合ブランドとして発信されることが重要です。本書では、里山などの自然資源や工芸などの文化資源といった個々の地域資源を顕在化させ、それらをひとつの建築活動に集約し、その土地ならではの地域ブランドイメージとして統合・発展させることに成功したプロジェクトをご紹介します。
また、地域における個々のブランド(地域資源)がバラバラに発信されるのでなく、統合ブランドとして発信されることが重要です。本書では、里山などの自然資源や工芸などの文化資源といった個々の地域資源を顕在化させ、それらをひとつの建築活動に集約し、その土地ならではの地域ブランドイメージとして統合・発展させることに成功したプロジェクトをご紹介します。
- ※Creating Shared Value/ 共通価値の創造:地域における社会的課題の解決と競争力向上を同時実現する事業。企業の発展と地域の発展を同時に拡大する概念。
なぜ、大成建設が地域ブランディングを取り上げるのか
大成建設は、土木建築業として全国都道府県 63 箇所の各地域に事業所があり、単にインフラや建築物を設計・施工するだけでなく、地場に根ざしながら日々地域が抱えるさまざまな問題に対応しています。
また、地域の人々が、いきいきできる環境づくりを支援するために、まちづくり・環境・産業振興といったその土地に必要な幅広い分野のソリューションを開発しています。そのため、設計部門や施工部門だけでなく、各エリアの活性化を提案するまちづくり部門や自然との共生や環境問題を扱う環境部門、新しい工法や素材・情報システムを開発する技術研究所など多岐にわたる専門家で組織されています。
特に地場産業の支援に関して、大成建設は生産に特化した専門部門であるエンジニアリング本部を有しています。そこでは、日々多分野の生産ノウハウを収集しており、地域の生産者であるお客様のニーズを先取りし、地域で脈々と培われてきた生産技術やそれらに代替する新しい生産システムをふまえてより具体的に地場に適した新しい生産方法を提案できます。
このように大成建設では、モノづくりに精通したエンジニアが、設計者と地域の生産者を橋渡しできる三位一体の関係を構築し、地域と企業が共に成長できる地域ブランドプロジェクトを推進しています。


地域と生産施設との関わりとその可能性
中世の日本では、江戸の各藩のように生活とモノづくりが町の中で融合し、三百諸侯それぞれの地域で産業が栄えて地場の活力となっていました。現在、各地の生産施設における営みはその系譜に位置づけられます。しかしその後、工場は戦後の高度経済成長期に入り、公害が引き金となって都市計画制度により町から隔離されることになりますが、近年は工場の中には地域に古くから息づく産業を継承し、より深く地域の暮らしに関わりを持つものが増えています。
本来、モノづくりの場である工場は、地場で培われた技術を活用しながら、人々が集まり、その土地ならではの生産物をつくり出すという点において、最も地域と深く関わっているビルディングタイプといえます。
そのような中で、生産施設は単にモノづくりの場になるだけでなく、地域交流、情報発信や新しい観光サービスのための場として何度も訪れたくなる場所となることが期待されています。それらは地域ブランドを具現化する存在となり、さまざまな用途を複合したミクストユースな建物として地域のハブになる可能性を秘めています。
地域に潜在化している歴史や文化など、絶対的な価値をうまくその地域固有のモノづくりの場と融合させることで、生産と文化と歴史などが絡み合い、地域再生の新たな結束点を生み出せるのです。
生産施設づくりを通して新たな価値を創造する
大成建設では、これらのプロジェクトを通して、企業と地域に関わるさまざまな組織や個人を巻き込みながら、設計施工だけでなく企画から竣工後の運用にいたるまで、その地域のブランディング構築に関わる総合的な体制を築くことを目指しています。
さらに大成建設社内の専門家だけでなく、外部の多分野の専門家と積極的に協働しながら、より多角的な視野を養い、企業と地域の持続可能な関係に貢献していきたいと考えています。つくっておわりの旧態依然とした建設業の考え方を払拭し、企業や地域の皆様とともに育てていくことができるような施設づくりを目指します。
本書でご紹介する生産施設の建築活動は、お客様と共に地域の新しい価値を創造できた地域ブランドプロジェクトです。大成建設とお客様そして地域による三位一体の取組みは、生産施設以外の商業施設・教育施設といったハードだけでなく、環境対策・イベントなどのソフトに至るまでさまざまな分野に幅広く応用できます。
これら地域ブランドプロジェクトの継続的な活動がそれぞれの土地に、人・モノ・技術をつなぎとめ、地場独自の多様な価値を生み出すことで、これからの成熟化していく日本において地域創生の新しいモデルとなると確信しています。
