スマートファクトリー

ものづくりの世界の転換期

昨今Society5.0やIndustr y 4.0が提唱され、情報空間と現実の生産空間がつながることで、生産プロセスや働き方が大きく変化しています。日本では社会背景として、以下の点が挙げられます。
技術力の急速な発展
IoT、AIにより各機械が互いに連携し合う生産体制に進化しつつあります。膨大なデータを蓄積し、それらを機械自身が分析・学習できるからです。コンピュータの強力な処理能力を活かすことにより、製造プロセスのより迅速な工程管理が実現しています。
ニーズの多様化
ネット社会の浸透により、エンドユーザーの嗜好が多様化しています。それにより、高付加価値化や差別化を図る個人レベルのカスタマイズ需要が高まっています。少量多品種、変種変量生産が主流となり、リアルタイムな情報を反映したフレキシブルな生産体制が必要とされています。
人材問題
生産年齢人口が減少するなか製造業は、労働力不足や技術の継承における懸念が顕著となっています。単に自動化された機械が人間の労働力にとって代わるだけでなく、生産方法を継承するロボットや、自律化された機械に製造を一任できるモノづくりの体制が必要とされています。
生産設備の自動化



製造現場では、従来の長大な流れ作業から、パーツごとのセル生産方式に移行が図られています。市場やニーズの変更に対応して迅速かつフレキシブルに生産体制を組み替えるためです。そのため無駄やサイクルタイムを最小化する自律型ロボットやAGV(自動走行台車)、自動ラック倉庫が活躍しています。生産管理については、部品にRFID(磁気ラベル) が貼られることにより、センサーの追跡で生産や在庫状況が可視化され、生産計画や工程管理に役立てられています。生産設備の状況をリアルタイムに計測するセンサーが搭載されることで、機械運用の最適化から設備における消費電力の低減まで一元管理が実現しています。
今後、情報技術と運用技術が融合しモノづくりの現場と、それらを動かす指示系統のリアルタイムで相補的なシステムが構築されます。フィジカルな実空間における生産の実証実験をバーチャルな情報空間でデジタルツインとしてシミュレーションできるのです。生産設計と稼働状況を容易にフィードバックしながら最適な生産システムを構築できる時代が到来しています。
建物・建築設備のスマート化



大成建設は建築と生産設備が融合したスマート化を提案しています。生産設備の自動化・自律化に伴い、建物や建築設備を含めて生産施設全体のスマート化を目指していきます。
生産設備の稼働状況に応じて、空調や照明など建築設備を最適に自動制御することで、インタラクティブに、建物のエネルギーと生産設備のエネルギーを効率運用していくことが可能となります。生産動線を立体化することで、建物をコンパクトにし、生産しやすくユーザビリティが発揮できる施設を創ります。それにより、空間容量も小さくなるため建設費用が抑えられ建物の省エネ効果も向上します。また、生産設備の増設の際には、生産空間のモジュール化やフレキシブルな構造形式を採用し、生産設備の変更にあわせて柔軟に対応することができます。
スマートファクトリーでは労働が省力化されることで、より働きやすい、ウェルネスな施設環境が創出されます。これからの工場は、地域の様々な産業を結びつけ、また災害に強い安全安心な場所として、社会や地域に開かれた新しい拠点としての役割が期待されているのです。
スマートファクトリーを実現する大成建設の技術
BIMを活用したサイバーフィジカルシステムの実現
建築物の構造データ・設備データさらには生産装置データを一つのデータ空間上に集約し、バーチャル空間にもう一つの生産施設をデジタルツインとして構築します。
デジタルツインの構築により、バーチャル空間上で生産施設をあらゆる角度からシミュレーションすることができるため、人やAGVの移動密度に応じた空間スケールの最適化から、配管中のメーターの読みやすさや点検扉の開き具合、産業用ロボットの可動範囲中の障害物などについて、こまやかな事前検討が可能です。さらには、バーチャル空間上で事前に作業者のトレーニングを行って立上げ期間を短縮したり、設備の稼働情報データと組み合わせて省エネルギーや装置のメンテナンスを考慮したりすることで、より最適な運用の実現が可能となります。

建築・生産設備が一体となった自動化技術
「T-Factory Next」は生産設備の稼働状況に合わせて空調や照明の自動制御を細やかに行い、最適な作業環境を維持しながらエネルギー消費量を削減します。
また、施設計画において、基本計画段階から生産装置と建築の最適なマッチングを実現し、建物の初期費用を圧縮しつつ、使い勝手が良い生産施設を実現します。
