JRセントラルタワーズ

20世紀最後の大事業・超高層立体都市

JRセントラルタワーズ

20世紀最後の大事業・超高層立体都市

1999年12月、東洋一の規模を誇った旧名古屋駅舎の後を受け、「JRセントラルタワーズ」が竣工。

低層部には、1日に110万人もの人々が利用する駅機能はもちろん、百貨店、レストラン街、多目的ホールを有し、高層部にはそれぞれオフィス・ホテルの入った、200mを超すツインタワーが並び建つ。
名古屋のランドマークとして設計されたこのタワーは、見る角度によって表情を変える軽やかなデザインで、上空を通る航空機上からも一目でわかる。

ほかにも360度の眺望を楽しめる展望台、ヘリポート、駐車場などの施設に加え、12、13階のレストラン街には約200m2のインドアガーデンが造られた。ここではミストヴェールや音楽など心を癒す演出と共に、緑豊かな樹木や草花が楽しめる。
このセントラルタワーズに訪れる人々は、日に15万~20万人。その数は近郊の市の総人口にも匹敵する。
駅ビルの概念を大きく超えた、「超高層立体都市」だ。

展望台(タワーズプラザ)
展望台(タワーズプラザ)

空中に浮かぶ「スカイストリート」

1階の駅コンコースから12基あるエレベーター「スカイシャトル」でオフィスタワー、ホテルタワーの両タワーへ続く15階へ上ると、ガラス張りの空中街路「スカイストリート」へつながる。

地上70mに位置するこの空中回廊は、巨大なガラスの箱が建物の外へ張り出すという、通行人の目を引く形にもなっている。眼下に広がる街並を見下ろす空中回廊にするため、設計にはさまざまな工夫が凝らされた。

延長約100mの空間を支える柱には、見た目にも威圧感のない、細身の円柱を採用した。とはいえ、防災上の安全性は犠牲にはできない。シミュレーション実験を繰り返し、チェックを重ね、監督官庁への特別申請も行われた。

スカイストリート(15階)
スカイストリート(15階)

ホテルタワー屋上に設置したヘリポートは、一部が鉄道側上空にせり出した形になっている。ボトル一本でも落とせば大事故につながりかねなかった。
そこで「ヘリポート押し出し工法」を採った。危険の少ない屋上で最終の仕上げまでを作業し、それをレールに載せて正規の位置まで押し出す。
地震など不測の事態にも備えていたが、なにしろ地上226mの高さでの作業。非常に緊張する作業だった。

工事中もさまざまな角度から環境や美観への配慮を行い、街の上にそびえるもうひとつの街として、作業員全員が細心の注意を怠らずに作業を行った。
1991年にプロジェクトが立ち上がり、完成まで10年。これだけの大規模工事にもかかわらず、重大災害ゼロで作業を終えられたのは、工事に携わったすべての人々の、並々ならぬ努力の賜物だった。

屋上ヘリポート
屋上ヘリポート

天へ向かって伸び進んでいったツインタワー。

安全で確実な作業に新技術を組み込む

JRはもとより、各私鉄が集中する名古屋駅には、分刻みで列車が行き交う。地下街や地下鉄も縦横無尽に走っている。その利用客の安全と列車の運行が最優先された。

そのため、国内で初めて「セルフクライミング外周養生枠」を採用。タワークレーンや作業員による作業がなくなり、資材落下の危険が防止できた。
更に、作業現場を外部から完全に遮断し、梁、床、外壁などを一層ごとに作っていくフロアー積層工法、建造物の柱に直接タワークレーンを取り付けるマストコラムクレーン(マストコラム工法)で作業効率と安全性を高めた。こうして人的事故を徹底的に排除していった。
一階層ずつ伸びていく二つのタワーを見て、名古屋市民も新しいランドマーク誕生への期待に胸を高まらせたのではなかっただろうか。

高層階だけでなく低層階や地下での工事も同様に駅周辺の影響に注意が払われ、工事による影響がないか、24時間体制で監視された。
地盤の動きが基準値を超えるとポケベルが自動的に鳴るようになっていたので、夜も安心して眠れなかった、と当時の地下工事を担当した小池博之工事課長は言っている。何事もなく迎えた竣工日、小池課長は久しぶりに安眠できたことだろう。

タワーズガーデン・テラス
タワーズガーデン・テラス

2002年に第43回BCS賞(建築業界賞)を受賞できたことは、技術の高さももちろんだが、そうした数々の努力を認められたためだと思う。

ヒューマンエラーをフォローする最新技術の導入はもとより、現場に携わる作業員一人一人の徹底した安全への配慮が、20世紀の最後を飾るビッグプロジェクトの成功を生み出した。本当に何物にも代えがたいすばらしい経験となった。

第43回BCS賞受賞
第43回BCS賞受賞

工事概要

発注者 東海旅客鉄道株式会社
ジェイアールセントラルビル株式会社
所在地 愛知県名古屋市中村区名駅一丁目1番4号
竣工 1999年12月
延面積 417,182.140m2
設計者 ジェイアールセントラルタワーズ設計共同企業体
高さ 245.1m
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