地図に残る仕事 Vol.019 雷電廿六木橋

景色に溶け込む美しい橋脚

地図に残る仕事 Vol.019 雷電廿六木橋

京都嵐山

「橋」と聞いてどんな風景を思い出しますか

京都嵐山の「渡月橋」や岩国の「錦帯橋」など旅先で眺めた「橋」、ドライブで渡った「横浜ベイブリッジ」、隅田川下りの水上バスで通過した数々の橋など・・・
きっと誰もが記憶に残る「橋」の風景を持っているのではないでしょうか。

「橋」は私達の生活圏を広げたり、利便性を高めるなどの「恩恵」を与えてくれると同時に、橋を眺めたり、橋からの眺望を楽しむという「眺める楽しみ」を与えてくれます。

大成建設はさまざまな橋に関わる仕事をしていますが、今回は「記憶に残り」「地図にも残る」景色に溶け込む美しい橋をご紹介します。

雷電廿六木橋
雷電廿六木橋

軽やかなラインを作る

大成建設では、1993年に業界で初めて土木デザインを専門的に行う部署を発足し、ダム、橋梁、トンネルなど数々の土木施設の意匠や景観設計を手がけてきました。
上の写真の橋、美しいラインが描かれていると思いませんか?
1998年に竣工した奥秩父に作られた高架橋の雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)です。

雷電廿六木橋は、建設される滝沢ダムの付け替え道路として、ダム工事着工に先立って400m下流に建設が進められたものです。ダム上下流の約125mの高低差を結び、もとの地形をできるだけ改変しないなど自然環境の保全にも配慮することを目指していました。

ループ
ループ

この橋は「大滝大橋」「廿六木大橋」の二つの橋と地山を開いたアプローチ道路の三つの区間から構成されていますが、優美なラインを強調したいという意図から、全体がひとつの橋に見えるように景観設計が施されました。
まだ手つかずの自然が多く残る奥秩父の急峻な谷間をループ状に横切り、まるで緑の中に放たれたかのような一筋の繊細なラインが特徴となっています。

『見て美しく、渡って心地よい』雷電廿六木橋

どうやってこの優美なラインは作り出されたのでしょうか

太さ6.5m、高さ30m~50mにもなる橋脚を薄く、細く見せる構造的なデザインは、下見板風の凹凸を施すことで陰影を強調しすっきりと細く見せる工夫をしています。
(下見板:外壁の種類で、細長い板を横向きにし、少し重なり合うように取り付けたものをいいます。)
これによってボリュームのある橋脚がぐっとスレンダーに見え、橋全体の優美さを引き立てたというわけです。

また年月とともに帯びる汚れも計算されています。
コンクリート構造物は表面の劣化や雨水、菌類によって年々黒ずんで行きますが、横縞が際立つことによってその汚れが目立たないように考慮されています。
夜に美しい光のループを描き出す照明設備は、従来の支柱型のライトではなく両側の壁に内蔵された間接照明となっています。デザインもさることながら周辺に生息しているクマタカへの影響へ配慮し、さらにドライバーにとって夜間安全に見える道はどんな道かを考えて選択されました。

橋脚
橋脚

基礎工事で掘り返した橋脚の土台部分を埋め戻し、地形を復元し、生態系への影響をなるべく抑えるよう配慮されています。
美しい景観づくりと環境を守るために様々な配慮がされています。

雷電廿六木橋では地元の人々に愛着を感じてもらえるよう「眺める」楽しみも考慮して設計されています。橋そのものに空中散歩できる歩道を設け、眺望や憩いのためのポケットパーク的な展望台を設けています。

『見て美しく、渡って心地よい』この橋は、橋の意匠の美しさを理由に下記4賞を同時受賞しています。

土木学会田中賞

プレストレストコンクリート技術協会賞

日本コンクリート工学協会賞

グッドデザイン賞

展望台
展望台
土木本部 土木設計部 関 文夫
土木本部 土木設計部 関 文夫

大成建設 景観設計担当者より

土木×デザインという新しい発想から、新しい土木のものづくりを始めています。これまで、土木=機能という関係でしかありませんでしたが、景観設計、デザインという豊かな発想を土木構造物に加えることで、美しさ、快適さ、豊かさをもつ地域の資産となる社会資本に生まれ変わります。

この橋の特徴は、「自分で自分の姿が見える橋」という特徴があります。通常、橋を通行する場合は、橋自身を眺めることができず、橋を見ようとすると他の道から橋に近づくしか手段はありません。まさに、ループ橋という特徴から生まれた自分で自分の姿が眺められる橋なのです。実際に近づくと、大胆な橋脚の真横を走りぬけ、徐々に天空へと導かれます。

画像橋の中央付近には、ゆっくりと車を止めて橋を眺める展望台も設置しています。そこから眺めは、まさにパノラマビューで、ループ橋全体を眺めることができます。さらに車を置いて、ゆっくり対岸まで空中散歩すると、前述のポケットパークが待っています。

季節と共に移ろいの風景を目指した雷電廿六木橋、ぜひ現地にお越しください。

工事概要

発注者 水資源開発公団滝沢ダム建設所
所在地 埼玉県秩父市大滝村大滝字廿六木地先~廿六木向地先
竣工 1998年
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