日本初のコミュニティ型こどもホスピス

TSURUMIこどもホスピス

WORKS

建物の風景
こどもホスピス

日本全国に15 万人いると言われる難病を抱えた子どものうち、生命を脅かす病と共に生きるLTC(Life Threatening Condition)の子どもが約2 万人います。一般社団法人「こどものホスピスプロジェクト」が2016 年4 月、大阪市の都市公園、鶴見緑地内にオープンした「TSURUMI こどもホスピス」は、LTC の子どもと家族を中心に、医療・福祉だけではカバーしきれないケアを行う、日本初のコミュニティ型こどもホスピスです。民間の寄付によって建設・運営され、無料で利用可能。2017 年からは宿泊サービスもスタートし、現在約100 世帯が利用しています。 その挑戦的な試みや、利用者に寄り添った建築に対し、 2016 年のグッドデザイン賞や、2017 年のBCS 賞など、いくつもの賞を受賞しました。

大成建設のソリューション

難病の子どもと家族に当たり前の日常を提供する 日本初のコミュニティ型こどもホスピス

わが国では難病の子どもとその家族が医療的ケアを行いながら自宅で暮らすことを支える施設が不足しています。この計画は難病の子どもとその家族の生活を支援する慈善活動・サービスと建築が一体となった日本初のコミュニティ型こどもホスピスです。ユニクロと日本財団の支援、多くの方々の寄付により実現できました。建物は中庭に面して6つのハウスが道で繋がる構成となっています。この中にさまざまな空間や居場所を設けることで、ここを利用する子どもや家族に「いろんな」わくわく・安らぎ・出会いをもたらすことを目指しました。

設計図

SPECIAL INTERVIEW

家であるだけではなく村のような場所

高場様
高場様
プロジェクトのきっかけを教えてください。

私自身、いわゆる難病の子どもの親なのです。長期入院していた時期もあり、退院しても多くの制限があるため気軽に外出できず、病院と家の往復ばかりで、徐々に社会から孤立していくのを感じました。
私たちのような家族はどのように社会と関わっていけば良いのか模索する中で、英国で世界初のこどもホスピスに取り組まれたシスター・フランシス・ドミニカを日本にお招きし、講演会を開催したのが大きなきっかけでした。
英国では各地域にサッカーチームがあるのと同じ感覚で、ほぼ全ての街に、こどもホスピスがあるということを知りました。日本でも「インクルーシブ」なコミュニティをつくり、未来に残したいと強く思ったのです。シスターの「できることから始めなさい」という言葉に背中を押され、私が会社経営で培った経験を活かして組織をつくり、2010 年から一般社団法人として活動を開始しました。

どのような施設を目指されていたのでしょうか?

LTC の子どもは「患者」として過ごす時間が多いので、ここにいる時は、彼らが「子ども」として生き、やりたいことをやり、家族と共に楽しめる、第二の家のような場所を目指しました。
それぞれ異なる病状に対応したパーソナルで幅広いケアを中心に、病気を抱えた子どもの兄弟のケアや、お子さんが亡くなられた後に遺族の方が交流できる場を設けたりしています。同じ病気を抱えた子どもがいる家庭同士を引き合わせてみて、新しいつながりをつくるサポートもしています。
スタッフは看護師や保育士、理学療法士など各分野のプロですが、こどもたちに接するときはあくまでも「友達」として接するようにしています。こうしたサービスは民間団体として助成金に頼らず、寄付によるフリースタンディングな運営だからこそ、できることなのです。

「いろんな」であふれる場

非常にフレキシブルなあり方ですよね。私もそれを受けて、いろいろな居場所があり、それらがつながりをもつ、多様性と寛容性のある「村」のような建築を考えました。

施設の建設においても、ユニクロ、日本財団など、多くの支援をいただき実現しました。土地も、大阪市の事業公募で選定され、プールやフットサル場に隣接した緑豊かで賑わいのある花博記念公園・鶴見緑地の一角を使用できることになりました。周囲に対してオープンで、様々な発見のある建物にしたかったので、出口さんの案は魅力的でしたね。弧を描いて建物が寄り合っている形なので、他の部屋にいる人の動きも感じられますし、部屋の入口やお風呂などにちょっとしたデザインの仕掛けもあって、気付きが溢れています。子どもだけでなく大人からも好評で、実現したかった「たまに遊びに行く、お洒落な叔父さんの家」のイメージ通りの姿です。

わくわく、安らぎ、出会い、の3つをもたらすような空間のあり方を考えたので、嬉しい限りです。今後の展開は、どのように考えていらっしゃいますか?

より子どもと家族に寄り添った活動へ深めていくとともに、コミュニティの幅を広げるため、オープンカフェを開催したり、施設の一部を開放し、地域の子どもとの交流会を企画したりしています。寄付が頼りですので、ネットで手軽にできるTポイント募金も始めました。活動を少しでも多くの方に知っていただき、こうした施設が当たり前のものになって欲しいですね。現在、各地でこどもホスピス設立の動きがありますが、理想的にLTCの子ども300人あたりに1つ(数値上では日本全国で83施設)、最低でも各都道府県に1つは必要です。しかし数を増やすだけではなく、クオリティを維持することを忘れてはいけません。私は「TSURUMIこどもホスピス」をオープンソースのモデルケースとして成熟させていくことで、様々な応用を可能にしたいと思っています。

こどもホスピスの日常
こどもホスピスの日常

工事概要

発注者 こどものホスピスプロジェクト(一般社)
所在地 大阪府大阪市鶴見区
竣工 2015年12月
延面積 979.11m2
  • 本コンテンツに記載された情報(役職、数値、固有名詞等)は初掲載時のものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があることをご了承ください。

関連情報

本ウェブサイトでは、お客様の利便性の向上及びサービスの品質維持・向上を目的として、クッキーを使用しています。
本ウェブサイトの閲覧を続行した場合は、クッキーの使用に同意したものとします。詳細につきましては、本ウェブサイトのクッキーポリシーをご確認ください。