【特集】カクヒログループスーパーアリーナ<青森市総合体育館>
公民連携事業で「健康」「交流」「防災」の拠点を創出!
予想を大きく上回る来場で賑わい続ける「カクヒログループスーパーアリーナ<青森市総合体育館>」
今回ご紹介するのは、2024年3月に竣工、同年7月にオープンした青森県青森市の「カクヒログループスーパーアリーナ<青森市総合体育館>」です。
まずは簡単にこれまでの事業の経緯について触れます。
青森市は、当時「老朽化が進む青森市民体育館の建替え」、「旧国鉄操車場跡地の利活用」、加えて「短命県(短命市)」という課題を抱えていました。その解決に向けて、民間事業者の幅広い能力・ノウハウを活かした提案を求めて、公民連携事業として「健康」・「交流」・「防災」をコンセプトにした多目的型アリーナ施設を誕生させるべく、2020年4月に公募型プロポーザル方式で募集要項等を公表しました。
(仮称)青森市アリーナのDBO(デザイン・ビルド・オペレーション)方式による施設整備+15年間の維持管理・運営事業および青い森セントラルパークのPark-PFI事業です。
この事業に対して、2020年10月、大成建設が代表企業としてコンソーシアムを組成、全3グループから提案書の提出があり、審査の結果、当社グループが提案評価、価格評価ともにトップで優先交渉権者に選定されました。
当社グループの提案が特に評価されたポイントは、以下の点です。
① 地元企業を最も多く参入させている点(グループ構成企業11社中8社)
② メインアリーナとサブアリーナの間に広大な屋根付き空間(ヨリドマ)を設けることで、建物と屋根付き空間を一体的に活用できる空間構成となっている点。特に青森市民の念願でもあった冬でも使える半屋外空間として高評価。
③ また、この空間(ヨリドマ)を活用する具体的な運用計画が提案されている点。
④ 24時間利用可能なスポーツクラブの設置、運営が提案されている点。
では、施設計画について担当した、大成建設の設計部 川野、堀川、高岩に話を伺いました。
今回、設計業務は、隈研吾建築都市設計事務所、大成建設、川島隆太郎建築事務所の3社の共同設計で、当社の川野、堀川は、隈研吾建築都市設計事務所と国立競技場の設計業務もご一緒させて頂いています。
カクヒログループスーパーアリーナの設計コンセプトは「交流拠点」。
世界屈指の豪雪都市 青森ならではの課題を解決しながら、地域とのつながりを空間に落とし込んだ施設となっています。
「健康」「交流」「防災」に寄与する本施設最大の特徴「ヨリドマ」
「健康」「交流」「防災」という3つの事業コンセプトを実現する鍵となるのが、メインアリーナとサブアリーナの間に設けられた半屋外の交流空間の3つの「ヨリドコロ」(寄り所、縁り所、拠り所)「ヨリドマ」です。
「ヨリドマ」は、南北のメインアリーナとサブアリーナと大開口でつながり、「ヨリドマ」、メインアリーナ、サブアリーナ、イベント広場を全て合わせると最大奥行き140mの広大な空間となり、一年を通して、天候に左右されずに屋外イベントの開催も可能で、市民の「交流拠点」「ハレの場」としてお祭りやスポーツイベントなど幅広い催しが行われます。
また、「ヨリドマ」の天井は、地元木材を使用し、リンゴかごのように編み込まれたような温もりを演出し、八甲田山を望む壮大な景色の開放感と両立しています。
さらに、アリーナやスポーツ広場、スポーツジムなどスポーツ空間の集積地として、市民が気軽に「ヨリミチ」することができ、自由に散策できる「健康増進施設」としても機能しています。


「キッズルーム」が交流と健康を加速
「ヨリドマ」とともに、交流の核となっているのが、県内最大級の広さを誇る「キッズルーム」。
雪の多い青森では冬場の子どもの遊び場が限られるため、子供たちが室内で体を動かせるこの空間は、雪国の子供の健康づくりに大きく寄与し、予測を上回る利用者で、休日はたくさんの親子連れが集っています。

一年を通じて安心して利用できる防災拠点
メインアリーナ、サブアリーナ、ヨリドマの3つの屋根を一体化して格子状のトラス、梁で一体化することで、豪雪に耐える屋根構造としました。青森県独自の季節風から守る防雪塀「かっちょ」も特徴的。冬は閉じて雪を防ぎ、夏は開放して風を通すことで、季節に応じた快適な環境を提供しています。
また、「ヨリドマ」と雁木空間「コミセ」が生み出す1,500㎡を超える軒下空間は、災害時の避難者の集合場所や配給スペースとしての活用を想定しています。

雪国特有の省エネ課題にも対応。一般的な公共施設では、大きなエントランス空間を温めるために多くのエネルギーを使いますが、ヨリドマを半屋外とし、エントランス共用部をコンパクトにすることで、快適で温かく、かつ約65%もの光熱費削減を実現しています。また、競技への影響を避けるため、風量を抑え、じんわり暖める居住域空調方式を採用するなど、細部まで工夫しています。


次に、運営・維持管理を担っている指定管理者「青森ひと創りサポート株式会社」の佐々木副館長にお話をお聞きしました。
スポーツ施設の副館長に相応しく、スポーツウェアにスニーカーで我々を迎えて下さりましたが、実は、佐々木副館長は「RAB青森放送」の社員。今回のプロジェクトには、公募時の企画提案段階から担当されていますが、スポーツ施設の運営に携わるのは初めての経験だそうです。
運営と維持管理に携わるスタッフは18名。朝8:00~夜10:00まで、年末年始を除き、休むことなくシフトを組んで稼働しています。
―オープンから今日までの率直な感想はいかがですか?
まず、来場者数ですが、当初計画では18万人だったところが、実際には27万人と大幅に予測を上回りました。(2025年11月時点で50万人突破)
青森市の総人口が約27万人ですから、青森市民がひとり1回以上、来場頂いた換算になります。
この大幅増の要因は、ズバリ「キッズルーム」です。延べ9万人が利用されました。
青森県で最大規模となるこのキッズルームが、土日休日は、2時間待ちの長蛇の列となったため、運用ルールを変更し、利用時間に制限を設けて利用者の入替をしています。
特に、冬の4か月間、雪で閉ざされる青森の子供たちの貴重な遊び場となっているようです。


―現状の課題は何かありますか?
来場が好調であるがゆえに、利用のピーク時には駐車場が不足しています。今、敷地内に300台分(市の要求通り)確保されていますが、Bリーグ公式戦に開催時には、一度に2000人以上が来場するので、臨時駐車場を設置して、アリーナとの間をバスでピストン運航しているときもあります。
―この施設の良い点を教えてください。
やはりヨリドマがこの施設の見せ場ですね。八甲田へ連なる美しい山並みが一望で見渡せるヨリドマからの景色はまさに圧巻で、イベント開催には最大の演出となります。
メインとサブアリーナの一体利用を可能にするヨリドマが、施設利用の幅を広げています。
―今後の目指す目標はありますか?
今後の目標としては、自主事業の開催数をもっと増やしていくとともに、利用料収入の安定化をめざします。
特に、防災拠点としての観点から、避難所利用を想定した宿泊型防災イベントの開催を企画中です。人々が当たり前に「行こう」と思える魅力的な運営を常に心掛けたいと思っています。
カクヒログループスーパーアリーナは、青森市が抱えていた複数の課題を解決し、地域に新しい価値をもたらす拠点として誕生しました。健康・交流・防災というコンセプトを軸に、ヨリドマをはじめとする多様な空間が、市民の暮らしに寄り添いながら活用されています。今後も、スポーツやイベント、防災機能を通じて、人々が自然に集まり、地域の魅力を発信する場として進化し続けることが期待されています。
