研究者の声を反映して生まれ変わった研究施設。

リニューアルの経緯
大成建設技術センター研究本館は、築30年弱が経過し施設の老朽化が進んでいました。また、お客様に当社の技術をご紹介する展示スペースとしての機能も充分ではありませんでした。

リニューアルにあたっては、これらの課題を解決することは勿論のこと、建築、土木、環境系分野など多岐にわたる異分野の研究者の交流がしやすい独創的な研究開発成果を生み出せるワークプレイスへの進化を追求しました。
次世代型研究施設の誕生
2007年2月、コンパクトダブルスクリーンなど自社技術を用いた次世代型研究施設が誕生しました。1階は技術センター研究本館へ来訪されたお客様をもてなす開放的なエントランスと旬の技術を紹介する展示スペースを設置し、3階~4階は大きな吹き抜け空間を設け、研究者が交流しやすい明るく開放的なコミュニケーションスペースになりました。



今回のリニューアル計画の段階では、当社独自のインタビュー手法T-PALETを用い、実際にセンターを利用する当社の研究者たちの要望を引き出して整理し、その結果として現在の技術センター研究本館が完成しました。
一体どのように整理され、施設完成後の施設にどう活かされ、利用者の要望に応えた施設となったのかご紹介しましょう。

研究者の意見を施設計画に反映
過去にご紹介してきたT-PALET(ティ・パレット)が、今回の大成建設技術センター研究本館リニューアルでも効果を発揮しているのか、FM推進部の丸山に聞きました。

FM推進部 丸山 玄
─大成建設技術センター研究本館リニューアルでもT-PALETが実施されたのですよね。
実際に施設を使用し始めての利用者の反応はどうなのでしょうか?
丸山:
リニューアル後の施設利用者の反応をご紹介する前に、私が以前サイト内でご説明したT-PALETについてもう一度触れたいのですが。
─大成建設独自のインタビュー手法ですよね。私もT-PALETを受けたことがありますが、日頃施設について感じていることを素直に話しているうちに、自分の理想の施設が引き出されたように感じました。そうは言ってもそれは私だけのニーズであって、様々な人のニーズをひとつの施設に反映させるのは難しそうですよね。
丸山:
この方法は、利用者の意見を体系的に整理し、優先順位を明確にするので、費用対効果の高い施設を実現することができます。施設利用者の満足度は、事前と完成後、2回のT-PALETを行うことで計ることができます。大成建設技術センター研究本館リニューアルの例で確認してみましょう。
─大成建設技術センター研究本館は、築30年弱が経過し施設の老朽化が進んで、独創的な研究開発成果を生み出せるワークプレイスへの進化が求められていたのですよね。
丸山:
技術センターですので、勤務する研究者にとって没頭したり使い勝手のよいのは勿論ですが、お客様が来館されることが多く、その点においてもより良い施設にして欲しいという思いを皆持っていたと思います。ただ具体的にどこをどうしたいのかという思いはそれぞれでした。
そこで、リニューアルにあたり2004年5月、T-PALETを実施しました。

外観・エントランス |
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展示スペース 来客への対応 |
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動線・セキュリティ |
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業務 (執務環境・配置) |
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応接・会議・打合せ |
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居住環境 |
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気分転換 |
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─要望のポイントが分かり易くまとまっていますね。
丸山:
要望が多かった一部をお見せしていますが、研究者の要望は多岐にわたりました。
具体的な要望は、部署や立場によって異なります。通常施設計画をする場合は経営者や一部の担当者により決定されてしまう事が多いと思いますが、T-PALETを行い第三者の視点からインタビューすることで、施設利用者の要望をありのままに整理することができます。
インタビュー結果は技術センター研究本館のプロジェクトメンバーと当社の設計担当者を交えてディスカッションを繰りかえし、施設計画に反映していきました。
継続的なT-PALETが施設を進化させます
─T-PALETは計画前だけでなく、施設完成後に利用している研究者たちにT-PALETによるインタビューを行ったそうですね。事後調査ではどんな結果がでましたか?
丸山:
2007年10月(入居後約7ヶ月)に事後調査を実施しました。

外観・エントランス |
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展示スペース 来客への対応 |
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動線・セキュリティ |
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業務 (執務環境・配置) |
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応接・会議・打合せ |
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居住環境 |
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気分転換 |
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丸山:
事後調査の結果の一部ですが、リニューアル後の評価としては吹抜けの明るく開放的な印象と、コミュニケーションのしやすい仕掛けが、高い評価を受けていることがわかります。これらはT-PALETにより施設利用者の声が多かった改善要望に対して施設リニューアル計画に盛り込んだものでした。
また新しい技術を導入した中で、省エネの効果と快適性の両立や、集中環境とコミュニケーションゾーンの関係などT-PALETを通じて生まれた課題を整理し新たな研究にとり組んでいます。

─なるほど、高評価の部分と新しい研究課題がわかったのですね。
完成後に調査をすることでお客様の要望をどこまで的確に捉えていたのかもわかりますね。
丸山:
ファシリティマネジメント視点で施設を見ると、リニューアル完成後に研究者が新たに使い始めたときが、技術センター研究本館利用のスタート地点といえます。そういう意味で事後調査は、事前にまとめた利用者ニーズの満足度評価を単にみるだけでなく、リニューアル後の施設を利用することで、はじめてわかる研究者のニーズを抽出することが大事なのです。