「天空のオアシス」として、2011年に全面リニューアル、2017年には天空のペンギンをつくりました。今回は屋内エリアのクラゲエリアを拡充することで、「天空のオアシス」をさらに進めることにしました。水族館プロデューサーの中村元氏を中心に、今までと同じメンバーで、プロジェクトに取り組みました。

古事記の冒頭には「天地初めて発けし時・・・三柱の神は、みな独神と成りまして・・・国稚く浮きし脂の如しくて、海月なす漂へる時、・・・」 とあり、神さま誕生の頃日本はまだ形がなく、水に浮かぶ脂を思わせるクラゲのように漂っていたという内容ですが、太古から浮遊するクラゲは、日本人を魅了してきたのでしょうか。 今回のリニューアルでは、クラゲの浮遊感を如何に表現するかが求められました。「海月空感」に新設の「クラゲパノラマ」水槽では、水槽内はシンプルな形状としました。大きさとしては、横幅約14m、アクリルの面積も国内最大級です。その前では、漂うクラゲしか見えず、クラゲに包みこまれたような感覚になります。制御された照明により明滅するクラゲは、本当に天の川のようで、宇宙まで続くかのような「天空のオアシス」となりました。

「クラゲパノラマ」水槽は重量軽減化のため、鉄板水槽としています。搬入の制約から持ち運びが容易な短い部材を主としています。上下階の大梁を利用することで、地震にも強い設計としました。しかしその梁の配置が水槽形状等は一致しないため、様々な工夫を行い実現しました。 もう1つ新設した「クラゲスクリーン」水槽は、触手の長いクラゲのための水槽です。これは工場製作のユニット水槽として完成形で運び込みました。 重量や大きさを常に確認しながら設計と施工は慎重に行われました。

初の試みの「クラゲトンネル」がある既存のクラゲエリアも、浮遊感をテーマに内装を刷新し、クラゲエリアの一体感を高めました。 ガラスや鏡面仕上げのタイルを選び、 水槽のクラゲが無限に続く空間になりました。 非日常、癒し、リラックスする場として、観覧エリアは照明を最小限にし、波紋照明による波の揺らぎと癒しの環境音やアロマも導入することで、この場では無ければ体験できない唯一無二の場所となりました。写真では伝えきれない浮遊感が、この「海月空感」にはあります。いにしえから漂っていたクラゲは、変わらぬ姿のまま今も浮遊し、私たちを魅了しています。