東京国際大学 池袋キャンパス

TAISEI DESIGN WORKS 2023 大賞受賞
巻頭インタビュー

低層棟と高層棟をつなぐ、光が降り注ぐアトリウムにて
低層棟と高層棟をつなぐ、光が降り注ぐアトリウム

“大切なのは、地域との一体感”

1965年、「真の国際人の養成」を理念に掲げて創学された東京国際大学。グローバル教育機能を高めるべく、2023年、東京・池袋に新キャンパスを開設しました。学生の活動拠点を2階レベルに配した「ステージ型キャンパス」により、隣接する防災公園の風景と連続しつつ、アカデミックな空間性を確立する、新しい都市とのつながり方を実現しました。 

東側外観
東側外観。としまみどりの防災公園(IKE・SUNPARK)と調和し、ピロティや透明感のある低層棟で学ぶ学生の姿が表出する、知的空間を感じさせるデザイン

─本キャンパスの大きな特徴の1 つに、防災公園と垣根なく接していることが挙げられます。
本計画のスタート時、倉田理事長は「学問の場」だけでなく、豊島区の再生や、地域の賑わい創出についても思考を巡らせておられましたが、この新しい風景はいかがでしょうか?

開設から約1 年の間に、すでに国内外から多くの方が視察に来られました。非常に好評で、特に公園との一体感が素晴らしいとの声を多くいただいています。本学が名実ともに国際大学としてのさらなる飛躍を遂げるため、人や企業、情報が集中する都心にキャンパスを構築することは、長年にわたる宿願だったわけですが、東京であればどこでもよかったわけではありません。大切なのは「地域との一体感」、つまり新キャンパスが風景に溶け込めるかどうかです。今回は偶然にもサンシャインシティ隣接地の造幣局跡地が再開発されることになり、本当にさまざまな出会いに恵まれ、本学の企画提案が採用されました。大成建設さんにも協力いただき、ビジネス・芸術・文化が融合する国際都市である池袋にふさわしいキャンパスをつくることができたと思います。

西側正面
西側正面。道路沿いには留学生の出身国の国旗約100本が並ぶ

─もう1つの特徴が「ステージ型キャンパス」です。
公園からレベルを上げて知的空気感をキャンパス内部に留め、学生が成長する特別な舞台を設えました。大学と都市との新しいつながり方の提案とも言える、この設計コンセプトはいかがでしたか?
棟構成
公園側の建物高さを低く抑え、公園への圧迫感を低減した棟構成

「パルテノン神殿のようだ」と仰った方もいました。一段高いところに、別の世界があるように感じるのでしょう。武蔵野台地の東端に位置する池袋一帯は、都心部の中でも高台にあります。ステージ型キャンパスは、教育や研究に専念できる環境を整えていただいただけでなく、この高台の利点を見事に組み込んでいただいたものであると思います。ランドマークとなるタワーを創り出し、地下階を設けず、22 階すべてのフロアが視野の開けた、非常に見晴らしがいい建物ができあがりました。


─「建物の高さ」と同時に、「格式の高さ」にもこだわっておられたのが印象的でした。
改めて、倉田理事長が建築に求めることを伺わせてください。

存在感を示すにはどうしたらいいのか―学問の中身が重要なのはもちろん、建築もその一翼を担うと考えています。ご存知の通り、明治期以降、官公庁や大学などはその威厳を示すために、西洋の建築様式を取り入れてきました。当時の「格式の高さ」の表現は、今見ると、重厚な力強さと荘厳さが際立つデザインとして感じられますが、現代らしい「品格」のデザインとは何だろうか―その時、脳裏に浮かんだのが、銀座の和光本館でした。戦前、私が生まれる少し前に竣工した民間の建物ですが、天然石張りの白い外観は、やさしさと品格を兼ね備えたデザインです。戦争で焼け野原と化した東京のまさにシンボルでしたね。関東大震災で一度建設計画が延期になった際、強靭な建物にするべく、石張りの外壁に変更したそうです。本キャンパスも100 年先を見据えて強く、そしてやさしさをもった建物でなければなりません。厳しさが必要なのは学問だけで十分で、器は人々を優しく包み込むものであって欲しい。集いやすい場づくりというのが重要であると考えたのです。

8階ラウンジ








高層棟の切替え部に設けた8階ラウンジ
2階レベルに配した学生の活動拠点「インターナショナルデッキ」
2階レベルに配した学生の活動拠点「インターナショナルデッキ」。
ピロティの軒天に公園の緑が映り込む

─100m級のタワーを石張りにすることは、そうそうありません。さらに、このアトリウム内も高層棟側の壁は同じ白い花崗岩で仕上げました。最後まで貫き通されたことに、強い感銘を受けました。

白という色彩も重要で、それをこれだけの量となると、採石場は国外に求めることになりました。輸入の手続きもさることながら、全数をチェックするのが大変でしたよね。自然のものなので模様や色などに多少のばらつきがあるため、実際に貼る順番で並べてドローン撮影した動画をチェックすると伺った時には驚きましたが、大成建設さんに息づく「ものづくりの精神」を感じて嬉しく思いました。
 外装だけでなく、各フロア、すべての教室・研究室の内装についても、みなさんと1 つ1 つ吟味して、選びました。日本のみならず、世界から集まってくる学生、教員が活動する場にふさわしい色づかい、デザインとは何か、数週間に1 度、時には毎週、数時間じっくり検討を重ねました。さまざまな意見を集約するのは簡単なことではありませんでしたが、大成建設さんが誇る設計力、ノウハウすべてを注ぎ込んでいただいたと思います。

2階の「TIUコモンズ」
学生が集い交流する、2階の「TIUコモンズ」

─今後の展望を伺わせてください。

大成建設さんが「地図に残る仕事」をされているように、本学も「記憶に残る」「歴史に残る」ような存在でありたい。国内のみならず、世界全体、ひいては人類の発展に貢献できるような、真の国際人を輩出する大学になっていってほしいと思っています。池袋キャンパスは、埼玉の川越・坂戸キャンパスとも電車1 本でつながっていますので、今後はこの3 拠点を連携させながら、広く国際社会から信頼され、世界の名だたる大学に並び立つ教育機関として、さらなる進化を目指してゆきます。

倉田信靖氏写真
倉田信靖
1937 年生まれ。大東文化大学名誉教授。ウィラメット大学名誉人文学博士。『公徳の国 JAPAN』『王陽明全集』(共著) 『李綱文集』『三事忠告』『吉田松陰』(明徳出版社)、『連戦』(早稲田出版)等、著書論文多数。2009 年9 月より学校法人東京国際大学理事長・総長に就任。 2021 年秋の叙勲において旭日中綬章を受章。

関連情報

本ウェブサイトでは、お客様の利便性の向上及びサービスの品質維持・向上を目的として、クッキーを使用しています。
本ウェブサイトの閲覧を続行した場合は、クッキーの使用に同意したものとします。詳細につきましては、本ウェブサイトのクッキーポリシーをご確認ください。