サッポロファクトリー

サッポロビール発祥の地にある複合商業施設(前編)

サッポロファクトリー

サッポロファクトリー

羽田空港から約2時間かけてJR札幌駅に到着し、駅の構外に出てみると澄みきった冷たい空気に包まれます。11月中旬にして既に気温が4.2度!北国の寒さを実感しながら別名「開拓使通り」とも言われる北三条通り沿いに佇む「サッポロファクトリー」へ向かいました。まばゆいイルミネーションに大きなクリスマスツリー。サッポロファクトリーでは例年よりも早いクリスマスモードを迎えています。

レンガ館エントランス上部
レンガ館エントランス上部
全長15mのジャンボクリスマスツリー
全長15mのジャンボクリスマスツリー

サッポロファクトリーは飲食店や物販店、シネマコンプレックス、ホテル、フィットネスクラブなど様々な街の機能を集積した複合商業施設であり、ファクトリーという名前の通りサッポロビール株式会社様の札幌工場 第一製造所跡地を再開発して誕生しました。100年以上のビール工場の歴史をご紹介しましょう。

1876年(明治9年)
北海道開拓事業の一環として日本初の本格的ビール工場「開拓使麦酒醸造所」が建設されました。サッポロビール 札幌工場 第一製造所の前身であり、サッポロビールの発祥地です。
開拓使麦酒醸造所
1886年(明治19年)
民営化に伴いサッポロビール株式会社様の第一製造所に発展、恵庭市へ移転するまでの約100年間、札幌市にてビールの歴史を築き上げていきました。
1989年(平成元年)
工場移転に伴い、跡地再開発事業がスタート。約4年をかけて「サッポロファクトリー」が完成しました。

大成建設は北海道で120年仕事をしてきた縁もありサッポロビール株式会社様が組織する開発委員会に参加しました。

インタビュー

第一製造所跡地再開発プロジェクトに出席していた
大成建設 都市開発本部 倉重 正晴 氏

プロジェクト開始時からのコンセプトは『「北の・あたらしい・くらし」を市民に提供する空間の構築と、歴史的建造物と現代建造物の共存』でした。
このコンセプトに基づいてサッポロファクトリーの象徴でもある「赤煉瓦建造物と煙突の保存」、「巨大アトリウム」や「屋内庭園」などの具体案がまとめられていきました。

寒冷地であり、特に冬は郊外で集まることの少ない札幌市民に1年を通して暖かい青空公園を提供し美味しいビールを飲んでもらいたいという発想と、サッポロビール株式会社様の原点である第一製造所の名残を動態保存して再生し続けたいという想いから、これらの計画は具現化されたのです。

私達もサッポロビール株式会社様の社員の一員になりきって取り組み、お客様と協働してプロジェクトを進めました。夢を追えたこのプロジェクトは、私の誇れる仕事の一つです。

大成建設 都市開発本部 倉重 正晴 氏

それではサッポロファクトリーをご案内しましょう。

「レンガ館」の入り口からアトリウムへ向かう途中では、この時期になると登場する煙突に登るサンタクロースがお出迎え。この中庭は「煙突広場」と呼ばれ、中央には白文字で「サッポロビール」と書かれた煙突が空に向かって高くそびえ立ちます。

煙突広場
煙突広場
煙突広場

「レンガ館」に転用されている「赤煉瓦建築群」の中で最も古いものは明治25年に建てられました。「サッポロビール煙突」は大正4年に作られたもので、ともに開拓使時代からの歴史を物語る風貌が印象的です。

レンガ館1階にはかつての貯酒蔵を利用した大ビヤホール「ビヤケラー札幌開拓使」があり、趣深い赤レンガに囲まれて同じレンガ館内で醸造された「開拓使ビール」を楽しむのも、サッポロファクトリーならではの魅力の一つです。

開拓使ビール
開拓使ビール
レンガ館の一部 「開拓使麦酒醸造所見学館」では<br>サッポロビールの歴史やビールの製造工程を展示
レンガ館の一部 「開拓使麦酒醸造所見学館」では
サッポロビールの歴史やビールの製造工程を展示
ケッセル(煮沸釜)の並ぶ見学館内
ケッセル(煮沸釜)の並ぶ見学館内

サッポロ都市開発株式会社OB 藤澤 和夫 様(当時:設計部長)

当時、赤煉瓦建造物の保存は民間では少なかったのですが、サッポロビール株式会社や札幌市民、北海道大学の先生方の熱意により動態保存を行いました。煉瓦の耐震性について研究し補強も行っています。一つ一つに異なる歴史的表情のうかがえる味わい深い煉瓦は一見の価値があります。

サッポロ都市開発株式会社OB 藤澤 和夫 様(当時:設計部長)
歴史的建造物である工場を保存・再利用したレンガ館
歴史的建造物である工場を保存・再利用したレンガ館

恵比寿ガーデンプレイス株式会社 北海道事業部 林 秀行 様

現在のビヤケラーは貯酒タンクを配置していたトンネル内を改修したものです。当時、貯酒庫からタンクを出した後、意外に残響が長いことが問題となり、ガランとしたトンネル内で音響試験をしました。冷え切ったトンネル内でみんなで凍えながらビールを飲み、絶えず会話をして音響を確認するシミュレーションを行ったことは忘れられません。

恵比寿ガーデンプレイス株式会社 北海道事業部 林 秀行 様
総レンガ造りトンネル型ビヤホール「ビヤケラー札幌開拓使」
総レンガ造りトンネル型ビヤホール「ビヤケラー札幌開拓使」
ここでしか味わえないビールに出会えます
ここでしか味わえないビールに出会えます

煙突広場を抜けて日本最大級の「アトリウム」へ。幅34m、全長84m、高さ39mの開放的な大空間には起伏のある芝生や樹木、小川、風車などで構成された屋内庭園が広がり、週末になると多様なイベントが開催されて人々の憩いの場所になっています。

藤澤 様

私は「巨大アトリウム」を創り上げていく過程が印象に残っています。札幌市は世界でも有数の積雪地帯であり、巨大なアトリウムを実現することは至難の業でした。積雪や結露、室内外の気温差でガラスの熱割れが起こらないかなど、不安要素が沢山ありましたが、専門家の方々の知識や技術を集積して実現することができました。
雪害や空調などに様々な技術を駆使しており、例として以下の工夫が挙げられます。

  • 積雪防止のため、ガラス屋根を半円形に設計。外壁に残る多少の雪は、室内との温度差で溶かす技術で解決
  • 結露防止のため、ノズルから乾燥した空気をガラス窓に吹き付けて早く水を乾かす技術を採用

屋内庭園と融合したアトリウム空間は、当初の目標である「真冬でも楽しめる公園」として見事に実現されています。

アトリウム外観(西面、煙突広場側)
アトリウム外観 (西面、煙突広場側)
屋内庭園
屋内庭園

サッポロファクトリーはご紹介した煙突広場・アトリウムを中心にその周囲をレンガ館・1条館、2条館、3条館、フロンティア館と「ホテルクラビーサッポロ」の建つ西館とが取り囲み、合計160のショップと施設が集合しています。
アトリウム空間を活用して年間に多数イベントの開催も行っており、情報や文化の発信地として、また多くの人々が集うコミュニケーションスペースとしての役割も果たしています。

左手:3条館、右手:2条館
左手:3条館、右手:2条館
ホテルクラビーサッポロ
ホテルクラビーサッポロ

工事概要

発注者 サッポロビール株式会社 安田信託銀行株式会社
所在地 札幌市中央区北2条東4丁目1番地2
竣工 1993年3月
延面積 159,975m2
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