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青函トンネル

青函トンネル

青函トンネル

本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」

1988年3月、本州と北海道を結ぶ「青函トンネル」が開業しました。
現在は北海道・本州の大動脈として、たくさんの貨物・旅客列車が走行しており、将来はフル規格の新幹線も走行が可能です。
海底部は23,3km、陸上部は30,55km、総延長53,85kmの鉄道トンネルとして世界最長(当時)のトンネルです。
のべ1400万人にのぼる作業員が携わり、工事期間は約24年間、日本の土木史上空前のスケールを誇る仕事となりました。
約54km、本州側と北海道側から掘削し海底下100mでトンネルを貫通させた日本の世界に誇る土木技術の一端をご確認下さい。

青函トンネル
青函トンネル

津軽海峡の真下を掘る未知の世界に挑戦

青函トンネルが完成するまでは本土と北海道の間の津軽海峡を青函連絡船が結び、主な交通手段とされてきました。しかしひとたび吹雪や台風が津軽海峡を通過すると、連絡船は欠航をよぎなくされ、多くの人々から天候に支配されない安全確実な交通網が切望されていました。1946年頃トンネル建設が可能かどうか国による調査が開始されました。

未知の世界に挑戦

海底部の地質調査や海底の深いところまで調べるための弾性波探査や磁気による調査を行い、トンネル掘削のための新技術開発などあらゆる調査・研究がくりかえし慎重に行われました。
そんな中、1954年に乗客・乗員合わせて1175人が死亡するという痛ましい青函連絡船洞爺丸の遭難事故が起こり、青函トンネル計画が具体化されることとなります。しかし技術的に建設可能との結論が出されたのは1971年です。

工区は9工区に分かれ、大成建設は北海道側の吉岡工区(14,7km)を担当することとなりました。吉岡工区は海の下、どうやって掘削が進められていったのでしょう?

吉岡工区

様々な技術が生み出された「青函トンネル」

3本のトンネル

青函トンネルには3本のトンネルがあるのはご存知でしょうか?
現在、列車が走行している「本坑」、本坑を掘るための「作業坑」、地質を調査するなど作業坑の先導的な役割を果たした「先進導坑」と3本のトンネルがあります。順番としては先進導坑⇒作業坑⇒本坑の順に掘り進めます。しかし、ただ掘削すればよいということではありません・・・。

3本のトンネルの位置(拡大)
3本のトンネルの位置(拡大)

青函トンネル海底部の地質は、『第三紀火山岩・堆積岩』が多くの断層により切られ、硬軟の変化に富む複雑な地質状況な上、海水が地底にしみてくる(湧水)という状況の中での掘削作業となりました。前方の地質調査にはボーリング技術を用いますが、主としてボーリングは油脈や鉱物資源などを探査するため真っすぐ下に掘るので、地球の引力を利用し正確に掘ることが可能です。

しかし海底部を掘り進むボーリングとは前方予知をしなくてはなりません。前方の地質状況を正確に予知するために水平ボーリングという非常に高い技術が開発されました。研究と改善が重ねられ、1000mもの長いボーリングが可能になりました。この水平ボーリング技術こそ青函トンネル工事でも最大のノウハウと言えるでしょう。

「先進導坑」は「本坑」より低い所を通しますが、これは湧水を地上に出す排水坑を兼ねます。「作業坑」は、本坑の施工を円滑に進めるためと、地質・湧水などを調査し事前に本坑の施工法を検討する目的を兼ねたものです。

水平ボーリングにより前方の地質や湧水状況を確認し、湧水が確認されたときは流動性のある溶液を注入し完全に止水、岩盤を強化してから掘進しました。作業坑の工事が相当進んでから、本坑への「連絡横坑」を設け「本坑」の施工をスタートさせました。

水との戦い

水平ボーリングで地質状況は事前にわかったとはいっても、やはり水と地質との戦いです。
高い水圧で吹き出してくる水をいかに止めながら掘り進むか、止水のための技術の確立が青函トンネル完成の鍵となったと言えるでしょう。

また、湧水の危険性や膨張して押し出される地盤をいかに早く安定させるかが、重要になり、そこで導入されたのが「吹付コンクリート」です。

吹付コンクリート作業中
吹付コンクリート作業中

この技術は、掘削した直後にコンクリートを岩盤に吹付けて崩壊を防止するというもので、安全性はもちろんのこと掘削作業のスピードアップにも大きく貢献しました。青函トンネルの工事で現在につながる様々な技術が生み出され活かされています。
しかし順調なことばかりではなく、1976年大量の湧水に遭遇してしまいます。
この続きは、次号お届けします。

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