創業50年となる老舗企業の新工場を2拠点に再建 #2

ソリューション1:最高の缶詰づくりを行う、地域に開かれた美里町工場
生産効率、働きやすさのレベルアップ
生産効率の高い工場にするため、生産ラインをワンウェイ構成にしました。具体的には、空缶供給→具材充填→調味液充填→封缶→缶洗浄を一連の製造ラインで構築しています。

HACCP対応、安全・安心の向上
HACCPに対応する安全安心な工場を目指し、工場内には作業工程を考慮したゾーニングを計画しました。水産加工業という業種のため、床が水に濡れてしまう
下処理室などのゾーンは、その他のゾーンときっちりと分けることにより、工場内は極力ドライな空間を保ち、微生物などが発生しにくい構造としています。
また、衛生度によって床の色を変え、従業員の意識が変わるような工夫を施しました。

従業員の意識が変わるような工夫を施しました

従業員と生産物の動線を分け、それぞれにサニタリーエリアやインターロックを設けるなど、異物混入対策も徹底しています。


環境への配慮
CASBEE Sランクを目指す環境にやさしい工場でもある美里町工場では、卓越風を利用した自然換気方式を事務・厚生エリアの各所に採用しました。快適な室内環境を維持し、空調エネルギーの節約にもつながります。
その他にも自然採光、バリアフリー、LED照明の採用、地場植生によるランドスケープなどを行いました。




株式会社木の屋石巻水産 製造副部長 兼 美里町工場長 中村 暢宏 様
大成建設のプレゼンテーションは、当社の理念をしっかり理解したうえで、その未来を見据えた素晴らしい提案内容でした。
それと同時に、例えば人と物の動線を一から考えてゾーニングを構成していく際に、具体的にどのようにすればいいのかイメージが浮かばなかった点について様々なアドバイスをしてくださるなど、衛生面や清掃性、使い勝手、環境への配慮等の点でレベルアップした工場づくりを共に目指し、無事に完成してくださいました。とても感謝しております。
3つのキーワードに基づくデザイン
美里町工場は、「Home 大きな家をつくる」、「Community 地域に開かれた場をつくる」、「Branding みんなが働きたいと思う工場をつくる」という3つのデザインテーマに基づき、社員や地元の方々に愛される建物を目指して設計されました。
Home 大きな家をつくる
どこにいても人の賑わいを感じられる、大きい家のような形で開放的な空間としました。地場の杉材など温もりを感じられる素材を使い、柔らかい光を使ってまとめています。


Community 地域に開かれた場をつくる
事務棟の大半のスペースを開かれた見せる施設としています。見学者通路を設けて製造工程を公開しているほか、地域の方々が集える交流ラウンジや広い緑地、催し物を開催できるテラス等を設置しました。



Branding みんなが働きたいと思う工場をつくる
若い方たちが水産業、そして石巻から離れてしまわないように、皆が働きたいと思えるような建物を目指しました。外観デザインは、木の屋石巻水産様の社員や地元の方々にとって大切な存在である鯨をモチーフとしています。

大成建設 設計本部 古市 理
美里町工場のデザインコンセプトでは、まず社員の方々に愛着を感じてもらい、大切に使ってもらう建物にするため、木の屋石巻水産様の企業理念でも触れられている「鯨」に着目しました。また、見学者通路や交流ラウンジなど、地域の人々に開かれた場として活用できるスペースを新設しています。
社長様との会話を通して、水産業の離職率が非常に高いという懸念をお伺いし、多くの人々に対して「ここで働きたい」と思ってもらえるような建物をつくりたいという使命感をもって、今回の設計を行いました。人々を元気づける地域のシンボルとして、この大海原、この美里町を元気にするような存在になることを願っています。
工事概要
発注者 | 株式会社木の屋石巻水産 |
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所在地 | 宮城県遠田郡美里町二郷字南八丁2-2 |
竣工 | 2013年3月 |
延面積 |
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URL | https://store.kinoya.co.jp/ |
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大成建設 エンジニアリング本部 渡部 隆一
美里町工場の計画における最大のポイントは、「最高の缶詰づくりを実現する環境を整備すること」でした。そのために当社のトータルエンジニアリング力を活かし、生産効率を向上するとともに、安全で安心な生産環境を構築するための各要素を、バランスよく高次元で具現化いたしました。
また、使いやすい工場にするため、例えば、作業する方々が働きやすいよう作業動線や作業スペースについてお客様とともに考え、構成いたしました。機械のメンテナンスが行いやすいよう、各機械の更新や変更に柔軟に対応できる工夫も行っており、その一例として、地下ピットを設けたり天井裏に自由に入れる構造とすることで、排水系や空調系の設備更新が行いやすいようにしていることが挙げられます。